リハビリ人生

知り合いに「アケスケなブログ」って言われました。あけみって名前のスケバン?って思ってたら赤裸々って意味でした。

酩酊記2022

今年もまた悪びれもせず一年が終わるらしい。

今年は仕事は忙しかったものの,そんなにストレスに追われていたわけではなかったように感じる。忙しいとはいえ自分が仕事に慣れたからこその気持ちの余裕ができたんだろうと思っていた。
とはいえ、忙しさの中で気持ちがすり減っていく人がいるのも分かっている。
私は職場の労働組合のようなものに所属していて、会合へ行く度、職場への要望を出し合っている様子を眺めている。「管理職にこれを何回言っても聞いてもらえない」とか「もっと改善してほしい」という言葉が真剣に飛び交っているのを私はいつも他人事みたいな目で見つめてしまう。
「ピリきゅうさんは何か不満はありますか?」と言われて、とっさに「早くこの会合が終わって仕事に戻りたいなと思っています。」と思った。思っただけで言いはしなかった。

職場に対して思うことはなくもない。でも自分の願い通りになんでも叶うわけでもないと思っている。管理職が必死で仕事をしているのも知っている。頭がよく回り,周りに気を遣える人であることは傍目でもわかる。そんな人が上にいて今の労働環境があるわけで,自分が不満に思って声をあげることなんて何もないなと思う。組合の人が管理職に要望を言って言い合いになっているのを横目に見ながら、管理職の側に感情移入をしてしまった。

「こうしてほしい」を言える人はすごい。

今年読んだ漫画のワンシーンがずっと印象に残っている。
「正反対な君と僕」という作品の中で,登場人物の女の子が友達や元カレに雑な扱われ方をされているのは分かっているけど受け流して過ごしていることに対し,登場人物の男の子が「怒れよ!!!」と叱っているシーンだ。男の子からの指摘を受けて「私、自分のことを大切にできてなかったんだなあ」と女の子が気づく。(少しずつ違うかもしれないけど許してほしい)

それを見て「私だなあ」と思った。
私は意思表示をするのが得意ではない。特にいやだと思ったことに関して相手にちゃんと「いやだと思った」と伝えるのが苦手だ。そう伝えた時の相手がどう思うか,それによって関係性が変わるかが気になってしまう。
仲が良い相手にはあくまでも自分ではなく,「嫌だと思う人もいるかもしれないね」と遠回しに表現して伝えるし,それができないときには距離と時間を置いて自分の中でなかったことにするようにしている。
そうやって生きてきたことに対して,「自分を大切にしていない」と表現されるのはしっくりきた。

「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」という小説を読んだ。
優しいからこそ社会の不条理にたくさん傷ついていく主人公と、逆の存在として不条理を受け入れて社会の中に溶け込もうとする女の子がいた。女の子は女子を粗末に扱うような飲みサーにも入っていて,粗末に扱われても別に仕方がないというどこか諦めも持っていて,主人公はそれをどうにかしてあげたいと内心思っていた。

これも共感するのは「仕方がない」とあきらめる女の子に対してだった。社会が誰にとっても生きやすくなるのは嬉しいけど、どこかで「あとは自分が我慢してやり過ごせば良い」と諦めの気持ちを持ち続けている。

「自分を大切にしていない」と作品の中で自分が評されることに納得をした。でも、総じて変わりたいとは思わなかった。
私が怒らなかったタイミングで,誰かが怒っている。組合の人が上司に労働環境の改善を訴えている。悪意ないふるまいに傷つけられたことに怒っている人がいる。女であることで虐げられたことに怒っている人がいる。私は怒るタイミングをことごとく逃しているのかもしれない。

でも、私が怒らなかったことで、続いている人間関係は,ほかの人は持てなかったものだと思っている。また,「別に持ちたくもない」と思われているかもしれない。

私は怒らない。でも関係は続けていく。私のことを雑に扱っている人間のことは私も雑に扱う。でもどこかで会ってたまに笑う。自分にはない言葉を聞く。オモシロいなと思ってまた会おうと思う。
そうやって形づくっていく。私のことが好きな人も、私を雑に扱う人も、全部私を形づくってくれる。日々違う色味に見えるそれは全部違う私だけども、全部私であるとも思う。

この前,友達の理性ちゃんと電話していた時に「きゅうちゃんの話ってめちゃくちゃ面白いし本当に笑ってしまうけど、絶対に当事者にはなりたくないなと思う」と言われた。

「お前にはなりたくない」と言ってくれる人の存在はまぶしくて嬉しい。
自分を大切にしていない私のことも、 大切に想って関わってくれる人がいることに、ちゃんと気づいている。

私は来年労働組合からきっと抜け出すし、まだ人を怒ることはできていないんだと思う。
この占いがすべて外れて,労働組合にゴリゴリ参加してこの世のすべてに怒り狂う女になっていたら、それはそれで笑ってほしい。