リハビリ人生

知り合いに「アケスケなブログ」って言われました。あけみって名前のスケバン?って思ってたら赤裸々って意味でした。

人をビビらせる画数の乳首

いつからかは分からないが、左のわき腹のあたりに変なイボがある。

BB弾をちょっと潰したくらいの大きさだ。自分の左乳首を見ようとすると、「先輩!よろしくお願いします!」みたいな感じで視界に入ってくる。

真っ暗闇かつ酩酊状態で左乳首どーこだ!?をやったらワンチャン間違われる可能性がある。ブブー!それは私の謎のイボでした!残念!お前はもう終わりです!


もしかしたらもう1年くらい経ってるかもしれない。そんなに何とも思っていなかったが、ちょうどブラジャーが締め付けられる位置にいるので風呂上がり汗をかきながらこのイボの存在を気にしないといけないことにだんだん腹が立ってきているのは確かだった。


友達とのご飯の約束が急になくなり、1日暇になったので近所の皮膚科に行くことにした。


予約をとるタイプの皮膚科ではなかったので、直接行ったら平日の午前中にも関わらずすごい人だかりだった。


iPadを持ってきていたので、作業をしながらひたすら待ち続ける。

隣に座ったおばあちゃんが「今日はすごい人混みだね!!!」と話しかけてるのか、独り言なのか分からんくらいの微妙な声量で言葉を宙に投げかけてきた。化粧もしてないし、イボを見てもらうためになんならノーブラで来てるのでスルーした。化粧をしてブラジャーをつけていたら、「今日は多いんですね」とでも返せたかもしれないが、スッピンでノーブラなのでスルーした。なんなら乳首3個あるし。見るか?おれの3個目の乳首。

と思ってチラッと横見たら、すんごいiPadの中見られてた。びっくりした〜。

 

 

 

「お待ちのピリきゅうさん、どうぞ〜」

 


1時間近く待ってやっと呼ばれて個室に向かう。


個室には男性の医者と、私の直筆の問診票がバインダーに入っていた。私が書いた「原因:ブラジャーのしめつけ?」という欄にマーカーで線が引いてあってなんか恥ずかしかった。見当違い乙wって意味だったらどうしよう。


「じゃあ見せてくださいねー」


そう言われてTシャツをめくりあげる。

乳首(偽)を見せている状態で乳首(真)の方が見えてしまってないか若干気になってしまった。

なるほどなるほど、としばらく見られた後、Tシャツを戻して、医者は神妙な顔で言った。

 

 

 


「……ガンって知ってる?」

 


え?????


ガン???????


いや知ってますが…………

ガン知らない人っている?なんかあの、ヤバい奴ですよね(笑)知ってる知ってる。知ってるよ。


………………………え?


なに?

このタイミングでガンの話するのなに?


は?


終了のお知らせ????????

 

 

 

固まっていると、先生は手元のメモに私のイボの絵を描き始めた。


いや、絵描いてる場合か。

説明せいや


「これね、ピリきゅうさんのわき腹にある」


知ってるわ。

見たらわかるわ。


すると、先生はイボの絵の下に大きく汚い字で「?性」と書いた。?の部分が絶妙に読み取れない。


「腫瘍にはね、悪性の腫瘍と良性の腫瘍っていうのがあるのよ。」


あーはいはいはいはい、え?

……私のは?

どっち?


あ、あの汚い字もしかしてソレ?

最悪の2択クイズ?????

 

「悪性の腫瘍はどんどん大きくなっていくの。で、身体の中で転移もしていっちゃう。これをガンって言います。

良性の腫瘍は大きくならない。そのまま。ほっとく人も多い。」

 

そうねそうね。

で、私のどっち????

そのイボの下に書いてある字どっち???

良??悪???良???悪???


「で、あなたのは良性」


良でしたーーー!!!!!!!!!!


「だからイボじゃなくて腫瘍ね。別に問題ないけど。手術しないととれないから、とりたいなら手術してくださいね。以上」

 

1時間待って、診察は一瞬で終わった。

何も考えられないまま、待合室の元いた席に戻る。

 

 

 

会話、ガンスタートの必要あった???????????

 

まだ心臓バクバクいってるんだけども。

なに?なんでそんなことすんの?

皮膚科ってガン宣告とかもやってんだ〜お得〜じゃないんだよ。

てか、腫瘍って何??????画数多すぎるだろ。腫瘍。怖っ!!画数多っ!!怖っ!!!人をビビらせるためだけの画数。減らせ減らせ。イキんなイキんな。せめて10画以内にしろ。角をとれ。

 

 

 

ズリズリズリズリィ〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!


出口で派手にコケた。

足に力が入らなくて段差で膝がカクついたらしい。思い切り膝を擦りむいた。


近くにいたおじいちゃんが「だ、大丈夫……?」とドン引きしながら聞いてきた。

大丈夫です、もありがとう、も言えずただ「すいません」と繰り返して、膝の血がスカートにつかないように、スカートをまくしあげながら車まで走った。

 

 

 

 


車の中でため息をつく。


毎日を後悔しないように生きてはいる。

でも、こんなに力が入らなくなるくらい、ドキドキするとは思わなかった。

大好きなじいちゃんはガンでこの世を去っている。


来年は30だ。

わき腹にへんなのができる。不調が多い。一生付き合っていく慢性的な不調もどんどん増えていくんだろう。明確な大人のラインを踏み越えた覚えがないのに、身体の内部はどんどん変わっていっている。


でも、人前でコケても涙は流さない。

足が震えて怖かったと、泣き喚かない。


身体だけ歳をとっていく私の、いくつかの精神的な成長がそこにある。気づいてないだけで、きっと多くの。


……この前健康診断で注射が怖くて泣いたことはオフレコにしとこうと思う。

ぜってーー手術とかしねーかんな!!!!!ざまあみろ!!!!!!!!!!

第3の乳首は責任をもって可愛がろうと思います。おまえにはもっと、画数が少ない名前をつけてあげるからね。