リハビリ人生

知り合いに「アケスケなブログ」って言われました。あけみって名前のスケバン?って思ってたら赤裸々って意味でした。

官能小説用語表現辞典を買いました


尾道に紙片という本屋さんがある。

 

ご飯屋さんの横の細い路地を、まっすぐ行かないとたどり着けないので隠れ家的な存在になっている。私はそこが大好きなので、尾道に行くことがあればいつも行っている。


「私は何が何でも千光寺の山に登りたいので、2人は私を置いて紙片で本でも買ってカフェなどでゆっくりしてほしい」と言ってお友達の理性ちゃんとは別れ、もう一人一緒にいたすずめちゃんと本屋に向かった。なにがなんでも寺に登りたい女を引き止める術は特にない。自然と別行動ができる関係性は心地よい。

 

紙片に来た。今日も素敵な空間である。
洒落た音楽が流れる中で本を選ぼうとすると、なんとなくいつもは手に取らない本をとってしまう。

ふとレジの方の本が積みあげられているスペースを見ると、すずめちゃんが信じられないくらいニヤニヤしていた。

 

「なに読んでんの?」

 

そう言いながら近づいたら、すずめちゃんが持ってる本の表紙が目に入った。

 

 

官能小説用語表現辞典

 


「いや、何読んでんの??????」
もう一回言った。

このオシャレ空間で官能小説用語表現辞典を手に取り堪えきれないという顔でこちらを見てくるすずめちゃん。

 

「いや、あのね、とりあえず読んでから言って」

すずめちゃんに手渡されて、本を開いてみる。

 


鉄梃魔羅(かなてこまら)

 

これでもかというくらい強そうな表現の男性器名称が目に飛び込んできた。

この用語辞典。女性器、男性器のあらゆる表現が2300語字に渡り載っており、用例付きで紹介してくれているのだ。

「いや、メチャクチャ面白いじゃん」
「面白いでしょ!?」
「これ買うしかないな・・・」

 

2人でコソコソと言っていたら、店長が小声で「在庫ありますよ・・・」と言ってくれた。
2人で官能小説用語辞典を取り合ってるように見えたのだろう。「我々は20半ばにして何をやっているんだろうか・・・」と恥じらいを持ちながら、「ひとつください」と迷いなきまなこで言った。

 

 

f:id:sobameshi5:20190822191104j:image

 


ここからは官能小説用語表現辞典にあったピリきゅうが好きなワードを紹介します。

中身のネタバレになりますので、買って熟読したい紳士淑女の皆様は飛ばして結構です。

 

 

 

ピリきゅうが選ぶ!

最高の官能小説用語!

 

 

 

 

 

〇女性器編〇

「小さな島」

(出典:豊田行二『野望証券マン』)


島好きのわたしには見逃せない表現でした。使い方は「洪水の中に小さな島を探り当てた」らしいです。上陸しないと島には何が眠ってるか分からないことにも通じており、なかなか奥深いですね。

関係ないですが、大学時代バイト先の先輩に酔って初体験の話を聞かされた時、「俺は穴蔵の中で宝石を掴んだ」と言ってました。あの当時はマジで何言ってんだろうと思いましたが、今では一体どういうことなんだろうと思えますね。

 

 

 


〇男性器編〇

「形状記憶合金」

(出典:南里征典『特命 猛進課長』)

 

初めて見た時は、まあなんて上手いのだろうと思いました。「わあ硬い!これって形状記憶合金みたい!」という使われ方をしてるらしいですが、そんなハツラツとしたテンションで出るワードなのか形状記憶合金。


ちなみに女性器を表すワードは、どこか全体的にどこか儚げで頼りないのに対し、男性器は常に屈強な感じがしてました。
男性像女性像が現れてるみたいで面白いですね。

最後は絶頂表現編です。

 

 

 


〇絶頂表現編〇

「浮遊するっ」

(出典:安藤仁『花唇の誘い』)


浮遊はしないだろ。

行為に及んでる最中相手が浮遊したらメチャクチャ怖い。ポアと叫ぶ他ないだろ。

 

 

 


ピリきゅうが気に入ったのは以上です。


官能小説ってエッチなだけじゃなくて、他の小説にはない言語感覚があって、その言語感覚に周波数を合わせようとすることによって、世界にズブズブと惹き込まれるからすごいなと思う。
作家の執念と、性の面白さが知れる本でした。

 

他にも2300語の言葉が並んでるので、皆さん買ってください。

枕元に置いて毎日ひとつ覚えよう。
合コンでお気に入りの男性器の呼び名を山手線ゲームで言っていこう。

 

せーの!パンパン!鉄梃魔羅(かなてこまら)!

 

https://www.amazon.co.jp/dp/4480422331/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_82MxDbE8BK1CF

馬鹿こそ人に優しくあれ


約束をした相手が時間に遅れた時、怒りの感情を抱いたことがない。


そもそもその状況でたいていの人は「全然大丈夫だよ〜」と言うだろうし、たかが待ち合わせで「遅れてんじゃねえぞコラ!!!」とブチギレる人はいないと思う。
人によっては少しイラつきながらも「全然大丈夫」の一言で感情を隠す人もいると思う。

 

私はというと、本当に一ミリも怒っていないので、いつも「いかに本当にキレてないか」を証明するために必要以上にヘラヘラしたりふざけて変なボケをかましたりする。そんな相手への気遣いをするくらい本当にキレていないのだ。

 

人生で友人に怒った経験が本当に少ない。
メチャクチャな寝坊をされても、自分の車を運転して軽く傷つけられても、物をなくされても、マジで全然キレてない。

 

 

その理由を昨日今日と私がやってきたことを羅列しつつ、説明したいと思う。


・大学の友達と遊ぶ約束をして、とても楽しみにしていたくせに、交通の便をとるのをギリギリまでしていなかったので、2倍くらい高い方法で行くことになる
・帰りのバスの時間を間違えていて友人たちを焦らせる。楽しかったのに妙にバタバタした終わらせ方をする
・車の鍵をなくす
・車の鍵を探すために昨日家に泊まらせてもらった友人や、車に乗せてもらった友人に連絡して車の鍵を探させる手間をかける
・車の鍵が見つからないので、鍵屋に連絡をして来てもらう
・鍵屋の車がデカくて近隣の住民に迷惑をかけ、何回も謝る
・車のセキュリティがけたたましい音を鳴らし、家から出てきた近隣の住民に何回も謝る
・鍵屋の人が暑い中作業を終わらせてくれて、料金の支払いを済ませる。
・車のスペアキーがいきなり見つかる

 

 

ギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

f:id:sobameshi5:20190805211200p:image


ア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

f:id:sobameshi5:20190805211213p:image

 

み゙ょーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

f:id:sobameshi5:20190805211227p:image

 


お分かりいただけたであろうか。
そう、バカなのだ。
わたしはシャレにならんくらいバカである。
勉強ができるできないとかではなく、様々なことの要領があまりに悪すぎる。

前にも書いた通り、このブログの名前の由来は「人間生活を送るのが苦手な私が、人間らしく生きるための人生をかけたリハビリの記録」である。

 

他にも今ゴミ箱の中に、Amazonの不在届けの紙がメチャクチャたくさんある。不在届けに連絡するのが苦手すぎて、全く連絡が出来ず保管期間を過ぎたため今わたしが注文したボディミストはAmazonの元へ戻っていて、Amazonの人に「????」という顔をされているに違いない。

 

ダメさを挙げ始めたらキリがない。
それでもなんとなくのその場しのぎでこれまで人生を生きてきたのだ。
その理由はなんだというのだ?

 

そうだよ!!!!!
私に迷惑かけられながらでも一緒にいてくれた家族や周りの人間がいてくれたからだよ!!!!!

人は絶対一人では生きていけないし、私は典型的なソレである。
これまでもどうしようもない私は色んな人に助けられてきたし、これからも助けられて生きていくんだと思う。

 


ふりだしにもどる。

 

友人がこちらにむかって走ってくる。約束の時間を10分過ぎている。「ごめん、寝坊しちゃって〜!」と謝罪の言葉を述べている。


怒るはずがない!!!!!!!!!!!!
マジでキレてないのでものすごいヘラヘラしながら「大丈夫だよ〜」と笑う。なんならちょっとボケながら。


私が一番色んな人に迷惑かけてると思ってるから、多少の迷惑を皆かけて欲しいと思う。そうじゃないと釣り合わないから。
申し訳なさそうな顔はしてもいいけど、私もその気持ちは分かるから、加害者の痛みを分け合おう。

 

馬鹿こそ人に優しくあれ。

そして馬鹿にもやっぱり優しくしてほしい。


鍵には馬鹿みたいにデカいくまのキーホルダーをつけた。くまが大きな目でこちらを見ている。明日も頑張らねば。

車上荒らしにあわなかった話

 

「理不尽な出来事を乗り越えていくのが人生である。」ピリ・キュ・チャーン(1994~)


結構な頻度で休日出勤がある。忙しさに余裕がなくなる時もあるが、やりたい職に就けている充実感の方が今は勝っている。
田舎なので様々な生き物がおり、休日に来て職場に侵入したハクビシンを追い出すという緊急業務をした時は「わたしはこんな所で何をやっているんだ」という気持ちになったりもした。

その日は、家から車で2時間半ほどかかる場所に行っていた。見知らぬ土地である。未だに慣れないヒールを履いて仕事をする。ダルいなりにも結構為になる話をフンフンと聞ける仕事だった。なんやかんや自分の成長につながっていることをぼんやり感じる日々である。目に見える成果はないものの、休日出勤の一日の終わりに達成感を感じる。
「疲れたけど良い一日だったな〜帰って淡麗グリーンラベル飲むぞ〜」と思い、駐車場に向かった。

すると、一緒に行っていた同僚が、先に車へ向かい私の車を見て、そこそこ大きな声を出した。

人というのは思いもよらぬ出来事に出くわした時、どうしたらよいか分からなくなるものである。

私は車を見て声は出なかった。
ただ脳内にでかめの文字が流れた。


窓、無〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(これくらい)


車の窓がなかった。

いや、正確に言うとあった。
ただ、私の「窓」という認識のソレよりかは遥かにバッキバキになって存在していた。
割れていたのだった。


「はい、それでは撮りまーす」

そこからしばらくして、気づいた時には私は、窓ガラスが割れたマイカーとツーショットを警察に撮られていた。
どんな顔をしていいのか分からないので、「にへぇ・・・」と口角を微妙にあげておいた。
笑わないカメラマンは無言で数枚写真を撮る。

「これ割れていたと気付いて動かしてはないんですよね?」
私の駐車が下手くそで、白い線から微妙にはみ出していたので、3人の警察に代わる代わるにと同じように聞かれた。
わたしの駐車が下手なだけです・・・へへへ・・・と私はまた気まずい笑顔で笑う。

駐車場に監視カメラがついていたため、その映像を頼りに今後捜査が行われるとのことだった。
ただ、具体的に捜査をするためには被害届を出さねばならず、手続きには数時間ほどかかると言われた。信じられんくらいなにもかもがダルい。
「後日また被害届出しに来ます・・・」と約束して、その日は帰ることにした。割れた窓ガラスをビニールでくるんでガムテープを貼った状態で走ったら「ズババババババババババ」とビニールが風でけたたましい音をたてていた。あと職場を経由した時に死ぬほど虫が入った。

そのまま車屋に行って、おでこからキューピーマヨネーズみたいなチョロ毛が生えているオジサンに、苦手なコーヒーを出されながら「なんでこんなビニールのかぶせ方したん?馬鹿なん?」となぜかメチャクチャ笑いながら小馬鹿にされた。知らんがな。正しいビニールのかぶせ方とか知らんがな。
完全に疲れていたので、さほど答えもせず、オッチャンのチョロ毛をぶち抜く妄想をしながらコーヒーを飲んだ。

代車は継ぎ接ぎのロボットみたいな車だった。エンジンはけたたましい音を鳴らし、色々な作動が不安になる車だった。でも窓はついていた。難しい思考を停止している私は「窓があるってすごい」という一つだけを思いながらやっとこさ家に帰宅した。

 

ここから私はだんだんおかしくなっていった。

そこからは、保険会社や警察色んなところとのやりとりを毎日した。
職場の上司や、周りの人間には「車上荒らしにあった」と伝えた。
皆、目を丸くして驚き根掘り葉掘り聞いてくれて、最終的に「可哀想に」という同情の眼差しを向けるムーヴをしてくる。
数日経つと、日々の警察とのやりとりに疲れたのもあったのか、車上荒らしに遭ったヤツというカテゴリにいれられるのが、段々面白くなってくるという変なテンションになっていた。

 

そのうち、研修で初めて会った人間に自己紹介と同時に「この前車上荒らしにあいました、ピリきゅうと申します。」車上荒らしの自己申告をするまでに至ってしまった。
当然メチャクチャ驚かれた。中には「なぜ今それを?」という顔をしていた人もいた。
当然の反応だ。今は短時間で自己紹介をする時間だ。キャッチコピーのように己の不幸をさらけ出す時間ではない。
ただもう疲れていて、私には「車上荒らしを受けた」と申告して周りをビビらせるという楽しみしか今残されてなかったのである。

 

あと、言えば言うほど「車上荒らし」というワードの強さが面白くて仕方がなかったというのもある。
今、大喜利の回答を振られたらなんでも「車上荒らし」と答える自信があった。絶対に「車上荒らし」と答えるパネラーがここにいる。もう、なにがなんでも「車上荒らし」って言いたい。
私は完全に変になっていた。

 


そんな時だった。

警察からまた電話がかかってきた。
「監視カメラを調べた結果、割れる瞬間に人影らしきものは写っていなかったと分かりました」
はえっ!と声を出した。ということは・・・と言う前に、警察が答える。

車上荒らしじゃなかったってことですね」

(嘘・・・・・・だろ・・・・・・・・・?)
私は職場のロッカールームで崩れ落ちそうになった。あんなに車上荒らしというワードに魅せられ、あんなに色んな人間に豪語していた結果、私の窓ガラスは車上荒らしではない割れ方をしていたのだった。
恥ずかしい。とりあえず、あの研修で会った人たちには二度と会いたくない。

「ピリきゅうさんの車の近くで、芝刈りをしていた老人の方がいまして、それの飛び石が原因かと思われます。」

(飛び石・・・!?飛び石割れ?芝刈りジジイの飛び石荒らし?)
必死で車上荒らしに変わるこの現象に名前を付けようとしたがしっくりこない。全ての現象には名前が付けられないのだ。仕方ないことである。

また、事件性がないということが分かったため、あとは芝刈りの団体と直接連絡をして解決して欲しいと伝えられ、警察はこの件から手を引くことになった。
私の手には芝刈りのボランティア団体の連絡先が残る。どうして、ボランティアのおじいちゃんと戦わねばならないのだ。戦意はどうやっても起こらない。

 


「もしもし、お話は○○署から伺いました。代表の○○です。」
団体に電話をかけたら、芝刈り団体の代表のおじいさんが出た。おじいさんではあるがシャキシャキと話している。
その後、何日間かこの代表のおじいさんとやりとりをした。団体で現場検証をしに行き、可能性などを考えたうえでまた連絡しますと言われた。

 

そして、最後の連絡はやってきた。

「すいません、当事者の者もですね、最善の注意を払った上で芝刈をしていましたので、今回はわたくしどもとしても認める証拠もないということでして・・・」

向こうは歯切れ悪く、「やっていない」という意思を伝えてきた。
私はもう完全に疲れていた。もうなんでもいいからこのやりとりを終えたいという一心だった。

「わかりました!では、私の車の窓がひとりでに割れたということで!イヨッ!天変地異!じゃあなクソジジイ!」

そう勢いよく電話を切れたら気持ち良かったであろう。私も歯切れ悪く負けを認め、もうこの件で電話はかけないと伝えた。

 

 

窓ガラス代は中古で安いのを用意してもらい、大体3万円くらいだった。保険は使わなかったので全部自費である。

ということでこのエピソードは3万円で手に入れたエピソードである。
車上荒らし」というスーパー激烈オモロワードは手に入らなかったが、「芝刈りジジイの飛び石割れ」という歯切れの悪い事実っぽいものは手に入った。

 


最初の一文に戻るが、一連の出来事を通して、理不尽な出来事をいかに乗り越えていくかが人生かもしれないと私は思った。
この先も私は色んな理不尽に出くわすだろう。


実は、この窓ガラスが割れた日、難病と言われる「ALS」という病気の支援イベントに行っていた。ALSとは、段々自分の身体が動かなくなり、最終的には呼吸困難に陥り死に至る病気である。
ALSも理不尽そのものだ。突然意味の分からない難病にかかっていずれ寝たきりになる運命を背負わなくてはいけない。
実際に、私の少し近しい人もALSを発症している。

 

「どうして私がこんな目に」
と言う言葉を、出来事の大小関わらず人生で何度も口にすることだろう。


そんな理不尽に出会った時、どう受け止められるかで人生のトータルでの面白さは変わってくるんじゃないかと思う。

現実と自分との間、ちょうど窓ガラス一枚分くらいのポジティブを挟んでみたい。

 

しばらくして、また研修があり、あの時自己紹介をした人に出くわした。
「ピリきゅうさんのことめっちゃ覚えてます!車上荒らし・・・大丈夫でした!?」

この前より時間があるので、3万円分のエピソード、ゆっくり話すことにするか。
私はまた少し、余裕のある人間になれた気がする。

 

気は病から

「病は気から」なんて言葉がある。

 

病気は気の持ちようで軽くもなるというような意味である。私の意見としては「なる訳ないだろアホか薬を飲め」の一択である。誰が考えたんだ。ブラック企業の元気な社長か。

 

私はどっちかというと、「気は病から」派である。

尚、そんな言葉は存在しないのでこの派閥に属しているのは私ただ一人なのだが。

先週あたり寝る前ものすごくしんどかった。ネガティブが自分を襲ってくる。これといって特に言葉にできる不安もないのに、「このままで大丈夫か?」とか考えて眠れなかったりした。脳内知恵袋に「私はこのままで大丈夫ですか?」と聞いたら「質問が漠然としている。置かれている今の状況の、何がどうダメなのかを説明しろ。こういう甘ったれた質問者がいるから知恵袋は・・・」と怖い脳内インターネットのオジサンにボコボコにされた。
「そんなに怒らなくても良いじゃない」と思うが、よく考えるとオジサンの言う通り、ここには特に不安はないと分かる。
そして、自分の喉の痛みと、身体のけだるさにやっと気付く。

 

おい!!!ただの体調不良じゃねえかよ!!!

 

私は脳内の知恵袋オジサンに「すいませんただの体調不良で気が滅入ってただけでした。」とコメントを添えてベストアンサーをあげる。

起きてもいない未来の問題を漠然と考えて不安になる時は、大抵身体のどこかが悪い時である。
体調不良や体の疲れが、脳にネガティブにさせる信号を送っているのだと思う。
これが私の提唱する「気は病から現象」だ。
対処法?
ゴチャゴチャ考えるな!早く寝ろ!病院へ行け!

 


病院に行って一週間薬を飲んだものの、私の喉は悪化していた。咳が止まらなくなって、このまま死ぬんじゃないか?と思う時もあった。
咳が役立った瞬間は、上司との大事な面談の最中に死ぬ勢いの咳が出てしゃべられなくなり、心配>>私が適当に用意した資料への指摘、という構図が出来上がり、「体調不良だけどよく頑張っている」という空気感で面談をやり過ごせた時だけであった。
(そう思ってるのは私だけの可能性はある)

 

あまりにも治らないので、今度は耳鼻咽喉科に行くことにした。土曜日、午前中で仕事を切り上げて自分の家の近くに帰っている途中。最近ハマっている激辛ラーメン屋が目に入った。
そこから自分の意識とは関係なく、車が駐車場に吸い込まれていた。
気付くと目の前には激辛ラーメンがあった。
一応言っておくが、喉の状態はもちろん最悪である。
自分の意思で注文したが、一応食べる前に「はて?」みたいな顔をしておく。
罪悪感が成す特に意味のない行為である。

 

一口食べて、死ぬほどむせた。
そして例の咳をするわけである。そりゃそう。なんで食おうと思ったんだ。アホか。
喉に優しくするという義務が、欲望には勝てなかった。

咳がやんだ後、鼻水が出てきたと思ってティッシュを鼻にやった。
すると思っていなかった色が目に入った。

メチャクチャ鼻血が出ていた。

 

今年25である。
風邪をひいて激辛ラーメンを食べて鼻血を出している。

 


「気は病から」などと言うておりましたが、
このアホさが治る病とか、あったりしますかね?

心をほだされてたまるか


接客を生業としている人間にまんまと接客されてたまるかという意地がある。

美容師さんなどの職業はすごい。髪を切ることの技量のみでなく、コミュニケーションを通してお客さんと心を通わせ、安心してもらうことによってまた来たくなる空間を演出してるのだと思う。
ただ、「すごい」と思うのと「話したい!」と思うのは別感情である。

な〜〜〜〜〜〜〜んも話したくない。
1ミクロンも自分の個人情報を話したくない。

髪を切ってもらいたい自分と、髪を切る美容師の間には金銭という架け橋があり、役割を担うだけの関係性が充分成り立っている。
それにも関わらず、コミュニケーションを取らなくてはならない意味がわからない。あーだこーだ言ったが、全ては私がコミュ障ということのみで説明はつく。

あまりに美容師と会話をしたくなさすぎて、大学の時は1回行ったら美容院を変えていた。色んな店の初回割引を何食わぬ顔で使いこなし、顔と名前を覚えられない楽さを味わった。周辺の美容院を行き尽くした後は原付も使った。
最終的には、美容師に嘘の個人情報を言って、話をなんとなく盛り上がらせるというテクまで使っていた。浮気で別れようか悩んでいる彼氏など存在はしていない。在るのは嘘つきのメス1匹。


そんなこんなで、ずっと接客をされることから逃げていた私だったのだが、この前逃れられない接客を受けてきた。

GWから脱毛を始めた。

前から多少興味はあったのだが、カウンセリングしてくれたギャルのお姉さんが言った「まつ毛から下の毛はいらないっすよ」の一言が最高だったので、決心が着いた。額縁に飾りたい言葉である。

月に一度通わなくてはいけないということで、強制的に常連と化すわけである。とはいえ接客から逃げ続けてきた過去を、容易く見捨てるわけにはいかない。
口からでまかせを言おうと考えていた。

「はーい、それじゃちょっと股開きますね〜」

私は全裸で綺麗なお姉さんたちの前で股を開いていた。なんかいい匂いのするタオルを顔に敷かれている。

「おやや?これはリンパの流れを良くするためにあれやこれやをするビデオかな?」
と何回か思ったが、あまりにナチュラルに股を開かされるので、動揺しないことを心がけていた。ずっと「ええ、いつでも開きますよ」という顔をしていた。

「そういえばお客さん普段どんなお仕事されてるんですかー?」

えっ今!?!?!?

「あっ○○です〜」

しかもメチャクチャ普通に答えてしまった。動揺して何も隠すことなく正解を言ってしまった。
人間、全てをひけらかした状態で質問をされると、何も抵抗出来ず全て答えてしまうと分かった。

お姉さんは私にOラインの処理の仕方を、ジェスチャーで教えながら、「わたしめっちゃおしりの毛多いんですよ〜!」と言って笑っていた。
もうなんか何がバレてもいいかと思う、少し汗ばむ令和の始まり。

 

春は奇人の季節

春といえどもまだ寒い日だった。

出張から家に帰るために高速バスの待合室に並んだイスに腰掛けた。
手にはミルクティと巷で話題のバスチーという菓子。私の脳内は目の前のバスチーという美味そうな菓子で頭がいっぱいだった。

 

最近、腹の周りにムニムニするなぞの物体がついているのだが、私は本来痩せているのでこのムニムニした物体はいつでも切り離せるはずなので、カロリーとかそういうのは気にしないのである、激ウマのチーズケーキが目の前にあるのだ、これを食べないことは目の前のチーズケーキにも失礼だ、今日は頑張った、だから私は今、このバスチーを食べるのであ

 

「人間はいつか根絶やしになる。絶滅こそが最高」

 

あ?
人が今バスチー食おうとしてる時になに?
急にパワーが襲ってきたけど?

前を見ると20代くらいの男が大きな声で電話をしていた。人類の根絶やしを希望してるのはどうやら目の前のこの人らしい。私はバスチーをとりあえず口元から離した。

 

「だから!!!俺がAIを初めて作った人間なの!4年前に!」

 

マジで?
そうは見えないけど。

AIの始まりって4年前なん?
すごいでかい声で話すので、思わず聞き入ってしまう。

 

「俺が2012年にAIを作って、それ以降俺の技術をパクッたのにも関わらず、なんの見返りもよこさない無責任な白人共が悪い。
世界権力は約立たずのマザコン共。自惚れを守るためにしか行動しないから問題が何も解決しない。しかも全員ゴキブリ並みの生命力だ。一般人がいくら人材投資をしたところで、マザコンしか生まれない世の中なんてクソ喰らえって思わないか?。ロイヤルファミリーはさっさと一家心中しろ」

 

オウオウオウオウ!!!
やべぇじゃんコイツ!!!


バスチー食ってる場合じゃないよ!!と私はバスチーをコンビニ袋にしまった。
私の目の前で世界を舞台にした話を展開するAIの父。根絶やし男。こんなヤバい奴の話を聞きながら、バスチーとか食いたくない。たぶん味とか分からない。

ところで根絶やし男、作ったと大口を叩く割には具体的にどんなものなのかが出てこないのはなんなんだ。企業名も出てこない。怪しさ満点だ。
あとなんでこいつの話し方こんな洋画の吹き替えみたいなんだ。ゴリゴリのジャパニーズバンドマンみたいな顔してるのに。

 

「ということで俺は、アンタに要求がある」

あ、ここまでは自己紹介だったらしい。
確かにくいつかせるには充分の素材だ。
就職面接ならもう帰ってもらうけど。

 

「というわけで俺はAIの使用料1ヶ月10円を要求する」

 

安!!!!!!!!
うまい棒でも買うんか!?!?

 

「1年で120円。100年で12000円。」

 

そうだね!単純計算だとそうなるね!
親切な説明!

 

なぜ10円なのか全く意味がわからなかったが、根絶やし男は拒否をする相手に対して「はぁ?俺はだから4年前AIを作って〜」と相変わらずの吹き替え口調で同じ説明を繰り返していた。でかい要求を持ってくるわりに、具体的な説明がない。ただ洋画独特のボケを交えて悪口を話してる。「オムツと白人の関係性は深い」って言ってた。HAHA!なるほど!こいつァいいぜ!
というか電話の向こう側誰がいるんだ。早く切れよ。我慢強いな。

話を聞いていると
根絶やし男の要求は

・AI使用料10円を払うこと
・AIに自由権をもたせること
・AIによる人間の監視システムを作ること

のようだった。全然何が目的なのかよく分からない。

私は根絶やし男の話を聞いていたら、バスチーを食べ損ねて、なんならバスも乗り遅れていた。バスだけにね!HAHA!こいつァ愉快だ!

もうここまで来たら乗りかかった船だ。こいつの目的がなんなのか、話してる相手は一体誰なのか、全部突き止めるまでこいつの話に耳を傾けてやるか。
そう意気込んだその時、根絶やし男は急に席を立った。


そして、人が密集している席に座り直してまた話を始めた。


よく見ると、私と根絶やし男が座っていた席の周りにはびっくりするほど人がいなかった。1回子供連れの女の人がそそくさと席を後にしたのは見たが、どうやら根絶やし男の挙動が怪しすぎてみんな席を離れたらしい。

 

根絶やし男は人が多くなった場所で、また同じようにコミカルに身振り手振りを加えながら、バスを待つ客席にチラチラ目を配り、大声で話していた。

 


たぶんあの電話はどこにもつながってなかったんじゃないかと思う。


私は次のバスの時間を調べ、バスチーを口に入れた。肌寒い気温と裏腹に、春の訪れを感じていた。

酒を飲むな!地獄に落ちるぞ!

お酒が好きだ。
ビールに日本酒、ワインにカクテル、基本的にはなんでも嗜む。食べ物にあったお酒を頼んでちょびちょびと食べるのも好きだ。お酒の場と雰囲気も好きだ。お酒の力を借りてほんの少し込み入った話もしやすくなって、普段は出来ない距離の詰め方をして関係を深くできる感じも好き。

ただ、そんなに強くない。
生ビールジョッキ3杯ハイボールに日本酒を挟み始めるとだいぶ気分が良くなってしまっている。弱いというわけではないのだが、そんなに強くない。それが私の酒との関係。

こうなるとどうなるか。
私の場合は、二日酔いが本当にエグいことになる。
飲み会の後はしこたま水を飲まないと、次の日は一日を潰す。夜は起きてトイレに向かい、眠れないまま朝を迎え、ベッドに水を置いて一日を過ごす。身体中が筋肉痛のようになり、頭は割れるように痛み、目を開けると目の前が回り、「もう二度と酒を飲むのはよそう」と回る世界に思う。その反省は活きたことはないのだけれど。

楽しい夜を過ごせば過ごすほど、帳尻を合わすかの如く地獄はやってくる。
楽しかった昨日の思い出は、その時ばかりは罪のように思える。


地獄は誰にでもくるのか?


うちの母親は二日酔いを知らない。
母は酒グセが悪い。
私は母親の酒を飲む姿があまり好きではない。お酒に酔うと気が大きくなり、あからさまにテンションが高くなる。そのわりに情緒が不安定になりすぐ怒る。
飲み会に行った母を迎えに行った父が1人で戻ると「何か知らんが逃げられた」と言った。どこに逃げるというのか。家はここなのに。
車であちこち探して帰ったら、猫とたわむれる母がそこにいた。
夜遅く仕事から帰ると家のドアが壊れてたこともあった。入れないから裏からはいった。寝ている母に理由を問い詰めると「知らん!!」と逆ギレされた。ドアが直るまでしばらく裏口からの出入りが続いた。

母はいつも笑えるか笑えないかギリギリのラインの酒グセを露呈してくる。
どれもこれも、笑い話として昇華すれば「面白いお母さんだね」で済む話ではある。

次の日母は決まって「昨日はすんませんでした」とシュンとして見せつつ笑う。二日酔いのない清々しい体調で。


地獄はわりと誰にでもは来ない。


元彼はとても酒が好きな人だった。
私は酒の味を覚えたばかりだったが、いつも頑張って居酒屋に着いて行った。
ぶどうサワーしか飲めなかったのでぶどうサワーばかり頼んでいた。大学生しかいない安いチェーン居酒屋の、箸立ての横にはノートがあった。めくるとそこに座った大学生たちのしょうもない落書きがたくさんあった。
今思うと別になんてこともない落書きノートなんだけど、その時はそれがすごく面白くて食い入るように見ていた。
すると彼は、私からそれを受け取り日付と自分の名前を書いて、「名前書いて」と私に言ってきた。
汚い落書きのノートに書かれた日付と名前。
それが妙に嬉しくて、彼が見てない隙に写真で撮って何回も眺めた。
その日は飲みすぎてやっぱり吐いた。
ぶどうサワー7杯分。


彼はメチャクチャ酒グセが悪かった。
先輩たちもいる飲み会で癇癪をおこして道の真ん中で暴れまわり、止めにかかった身体の大きい先輩たちを振り払って押しのけた。先輩は転び、腕時計が壊れた。
誰かが大学からリヤカーを持ってきて、寝ている彼は山の家にある家まで運ばれた。

その後も彼の情緒不安定は続き、情緒不安定の延長線上。
サークルの飲み会に彼は来ず、LINEには既読がつかなかった。
先輩が「ビールの人何人?」と聞くとテーブルにいたほとんどが手を挙げた。
本当はぶどうサワーが飲みたかったけれど、わざわざひと手間とらせて、ぶどうサワーを頼むのがすごく面倒になった。
「わたしもビールください」と言うと、「おっ!いいねえ!」と言われた。
初手でビールを頼むのは、何も考えなくて良くて楽だし、人から「いいねぇ」と言われることなんだなと学んだ。
ろくに話も聞かず、ビールを飲み続けた。
飲み続けると不思議とビールが不味くなくなった。
ビールはその日を境に大好きになった。
その後彼からはアッサリと別れを告げられた。


私は酒で人に迷惑をかけたことはほとんどない。でもいつも二日酔いで酷い目にあう。
酒飲みが酒で迷惑をかけたエピソードを意気揚々と語り、それが許されて笑いに昇華される空気感は苦手だ。
お前らみんな地獄に落ちろ。
そして「もう絶対酒は飲まない」と誓え。
その反省はやっぱり活きることはないのだけれど。

地の底から這い上がってヘラヘラ笑ってまた乾杯しようか。
人生、地獄と共にあり。