リハビリ人生

知り合いに「あけすけなブログ」って言われました。アケミって名前のスケバン?って思ってたら赤裸々ということらしいです。

悪口という名の処方箋

今日はまたコンパニオンをしていた時のお話だ。


コンパニオンにめちゃめちゃ口の悪い先輩がいた。Kさんとする。


コンパニオンは宴会が始まる1時間前に事務所に来て控え室で着替えたり化粧したり身支度を整えて30分前にミーティングを済ませて旅館にバスで運ばれる。
初めた当初控え室で会話のできるような友達もそこまでいなかったので私は30分間控え室という空間で過ごすのがめちゃめちゃに嫌だった。女同士の会話がすっげー怖いからだ。

「えっ!ポーチ変えた?どこの化粧品使ってんの?」とか聞かれたら終わった・・・って思っちゃう。ブランドやら何やらになんのこだわりも持ってないから、金銭感覚が狂ってるあんたらより、金がなぜか飛ぶ勢いでなくなっていく庶民派の私は安いもんしか持てないし、ブランドを答えて「へ〜〜〜」みたいな反応されるのがめちゃめちゃ傷つくからもう頼むから放っといてくれと思う。


まあ後々、向こうは交流を持とうと話の糸口を探してるだけのただのいい子たちということに気付くけど、とにかくめっちゃこわいから、最初の方は化粧も家でフルメイクにして、控え室で30分間ひたすらTwitterばっか見てた。そんなビクビクしていた私をもっとビクビクさせていたのがKさんだった。

「男っていうのは少しの毛もあったらダメなのよ!!!願わくばツルッツルがいいの!!!ツルッツルが!!」

控え室に響き渡る1番でかい声で男性の毛について熱く語るのがKさんである。

「スネ毛も出来るだけ生えていてほしくない!!ヒゲも生やすな汚い!!ケツ毛と胸毛に至ってはマジで死んでくれと思う!!」

男性に対してアレコレ注文があるようなのだ。コンパニオンで溜まったストレスをKさんは吐き出すかのようにめちゃめちゃに客の悪口、男性の悪口を言いまくる。

Kさんはすごい美人というわけではないし、どちらかと言えばファニーな顔つきをしている方だと思う。(私も分類すればもちろんファニーな顔つきをしている)
正直もう「お前もブスじゃねえかよそこまで図々しく客の悪口言うなら鏡見てからもの言ってくれ」と心の中で思いまくっていたのだが、それを口に出すとKさんと同じになるので言わなかった。(ブログで特定の人物を指してブスとか書いてる時点で人間性は大体同じ)


最初はKさんのことが嫌でしょうがなかったのだけども、Kさんがチーフの席に一緒に入る機会があり、盛り上げ上手で女の子の面倒を見るのが上手いKさんを見て、「ちゃんと仕事が出来る人だな」と思った。
Kさんのことを認めることが出来るようになると、Kさんの悪口も好きになってきた。


Kさんは旅館に行くまでの送迎車の中でいつも、「水商売に来る客なんて全員ゴミクズの掃き溜め」と言い放っていた。その最底辺のゴミクズに媚を売ってお金を貰ってる私達はなんなんだろうとも思ったけど、私はそれを聞く度に爆笑せざるを得なかった。


「エステに何回も何回も行ってる女は、自分で綺麗になる努力もせず金に物言わせて他力本願でどうにかしようとしてるから、みんなドブス」って言ってて、自分もめちゃめちゃエステ行ってるくせに、達観しててめちゃめちゃカッコイイと思った。


最近、ストレス解消したことを聞いたら
「タクシーに乗ってすごい運転が荒かったから降りる時に運転手にめちゃめちゃ怒鳴りつけて、その後すぐタクシー会社に電話してめちゃめちゃクレーム入れてやったことはスッキリした!!!!」って言われて、この人マジで最高だなと思った。



ある時、Kさんがチーフの席に一緒に入ったことがあった。
その席は上座の一番偉いお客さんが少し気難しいオジサンだった。私が前に座った時も、気に障るようなことを言わないようにとハラハラしながらとても気を遣った。
私がお手洗いに行っている間に、Kさんとその偉い人で一瞬一悶着あったと女の子から聞いた。事務所に帰って控え室で何があったのか詳しく聞くと、そのオジサンはKさんに向かって、「誰がこんなブスよこしたんだ!!!!」とブチギレ、しまいには首を締めるような動作を取ってきたらしい。とんでもない自体である。
さすがのKさんもこれは沈んで、いつもの悪態をつく余裕なんてないんじゃないかと、控え室はザワザワしていた。


チーフの処理を終えてKさんが控え室に帰ってくると、開口一番に「あのハゲ!!!!」と叫んだ。


「なんがブスじゃあのハゲ頭!ハゲ頭引っぱたいて『うるさい!!』って言ってやったわ!!!!!!!!!!!!」
とKさんは高らかに言う。


「自分もブサイクなくせに何を言うとるんじゃハゲが!なんなら私より、隣に座っとったお前の嫁の方がブスじゃボケカス!!!!!!!!!!!!!!」

といつもに増して清々しい悪態をKさんは放ちまくった。

心配していた私含め女の子たちは、Kさんのあまりの悪口に思わずまた笑っていた。
ザワザワしていた空気感は一気に笑いに変わった。


心底この人はカッコイイなと思った。





Kさんは実は私より2歳年下である。

その事実を知ってからも私は敬語をとることが出来なかった。

あまりの貫禄や落ち着きを放っていてタメ口を今更使うのがこわいというのもあったが、純粋に尊敬していたからである。


Kさんはコンパニオンの他に、キャバクラでも働いていた。時にはコンパニオンの宴会を終えて、そのままキャバクラの方に出勤して朝まで仕事、という日もあるようだった。

「女の子がチヤホヤされる寿命は短いからね。もうすぐ21よ。若いなんて言われなくなる。だからちゃんと仕事探さなきゃね」


と言いながら、Kさんは元気に働く。
21で若いと言うなら、2歳上の私はどうなるんだと一瞬思うが、そういう話ではないのだ。周りとの比較なんて関係ない。
この仕事は「求められているか求められてないか」自分自身が一番理解できる。相手の表情、話し方、空気感。個人の価値は個人の物差しで計られ、需要を肌で感じていくのだ。




挨拶も出来ないままに私はこの仕事を辞めたので、Kさんにも別れの挨拶もしてない。
外で遊ぶこともない、仕事が終わったら他人同士、忘年会や歓送迎会も何も無い、割り切った職場で、女の子同士の関係性もアッサリしていたので、まあそれでいいかとも思う。でもKさんのおかげで楽しくやれたということはずっと残るんだろうなと思う。





Kさんが今もどこかで頑張ってたらいいなと思う。


「気にしなくていいよ!あんなクソハゲ!」


悪口で人を元気にしながら。