リハビリ人生

知り合いに「アケスケなブログ」って言われました。あけみって名前のスケバン?って思ってたら赤裸々って意味でした。

パンケーキを可愛く食べれる残り時間

最近24歳になった。
相も変わらず大人と子どもの境目なんて分からないけれど、付き合う人間が限られるようになったのは歳を重ねていったら証拠なのかもしれない。


「ごめん遅れる」

約束をしてる2人から連絡が来てわたしは珍しく「待つ側の人間」になった。いつも私は支度が遅く待たせる側になってしまう。待つ側の人間は自発的に何かしない限り誰かを不快にさせることがおそらくないので非常に気が楽だ。「りょりょ〜ん」という伸ばし棒のニョロニョロに、私の呑気さのありったけを詰めた。

先に合流したのは理性ちゃんだった。
理性ちゃんというあだ名は今つけた。頭が良くて丁度いい言葉を探すのが得意な子だけど、根っこの部分は倫理観がないみたいなことを自分でいつも言っている。倫理観が0だった幼少期のエピソードを酔うと話してくれる。いつもは理性で人間のあるべき姿を保っているので理性ちゃん。理性ちゃんは「今日午前中にジムの体験予約をいれていたのに寝坊で完全にすっぽかしたし、連絡もまだ入れてない」と私にビクビクしながら伝えてきた。理性で抑えきれぬ怠慢さがすでに見え隠れしている。私は彼女のそういう人間くさいところが好きだ。
「きっとジムのマッチョは優しいから今連絡しな・・・」と後押しをして、連絡するとやっぱり優しいマッチョが出たらしい、簡単に次の体験予約をいれていた。マッチョは大抵優しい。

私たちは食べると幸せになれるらしいネーミングのパンケーキ屋の列に並び待っていた。今日の第一ミッションであった。すると、すずめちゃんが申し訳なさそうに遅れてやってきた。すずめちゃんは過去ブログで書いたことのある友達だ。
待っている間に「キリンは寝る時に首を折り畳んで寝るらしい」という豆知識をすずめちゃんは披露してくれた。何の流れだったかも忘れたが、写真を見るとキリンは長い首を確かに折り畳んで、想像以上に小さく丸くなって寝ていた。わたしはてっきり足も首もそのままフィギュアが倒れたみたいな姿で横になってると思っていたことを告げたら「足腰の骨のつくりが頑丈すぎる」と言われた。


そうこうしてるうちに、いつもは行列に並ばないと入れないその店に私たちは運良く数分の待ち時間ではいることが出来た。

女の子はパンケーキが好きだ。甘いものを見るといつだってワクワクする脳内物質が出るように仕掛けられている。メニューを見ながら、パンケーキを選ぶ。
「パンケーキ屋のメニューのご飯メニューの美味しそうさは異常」という談義に花を咲かせながら、各々甘くて美味しそうなパンケーキを選んだ。

パンケーキを待っている間は、すずめちゃんの会社にいる「朝礼の挨拶で毎回しじみの効能を話すオジサン」の話を聞いていた。ヤマもオチもなく、ただしじみの話をするらしい。あまりに脈絡がなさすぎる。


パンケーキが到着すると、そのふわふわな厚みに目を奪われた。ひと口食べると卵の甘みが口に広がった。これぞ幸せだった。しじみジジイのことは忘れ、私たちはパンケーキの美味しさを噛み締めたのだった。
パンケーキを美味しく楽しんでいるこの瞬間、わたしたちは何歳であっても乙女なんだと思った。

 

ただ、可愛い乙女でいれる時間はなぜか年々少なくなるのである。

「・・・・・・・・・きついな・・・・・・・・・」

誰からともなくその言葉を口にする。
パンケーキは3分の1残っている。

「ちょっとそのバナナちょうだい」
「そのかぼちゃのソースくれ」

各々が自分の皿に乗っていない味を求めだす。
もう完全に甘みがいらなくなっている。
あんなに求めていた甘い刺激が、私たちの胃を苦しめている。

「クリームの下に残りのパンケーキ隠していいかな・・・」

挙句の果てにはそんなことを言い出すのだった。

「隠そう隠そう」

「もううちの地元の郷土料理ってことにしよう」

落書きと暴力が蔓延るうちの地元の郷土料理。乙女の食べ残しパンケーキ隠し。

新たな郷土料理が誕生しそうになりつつ、わたしたちは水で流し込むように残りのパンケーキを食べたのだった。
パンケーキは間違いなく美味しい。
ただ、私たちにパンケーキを受け入れるだけの乙女力が足りてなかっただけなのだ。
この場に悪い人間はいない。


パンケーキ屋を出てすぐ私たちはマックに向かい、気が狂ったように塩分を摂取した。
あんなに美味しいチキンナゲットは初めて食べた。
「恐らく思うにこれが1番正しいマックの食べ方」と私たちの中で結論もついた。
あまりにも美味しかったので店を出ながら「あー美味しかった・・・」と上質なランチを済ませたかのような呟きをしてしまった。


マックの後、時間の潰し方が分からなくてしばらく街を放浪したあと結局カラオケに行くことになった。「結局高校生からなんにも変わらないね」なんて笑った。

夜、お目当てのシーシャを吸いに、私の友達がやってるBARに行った。
お酒を飲んだ時にやったら楽しいことを全てやった結果とても楽しくなってしまった。
0時を超えた時、3人で「終電なくなっちゃった〜」と例のやつを言ってみたのだが、「そうだね〜」「ないね〜」と共感し合うことしかできず、女3人で終電逃しちゃった奴をしても、ただ困っている人たちにしかならないという気づきを得た。

その夜はお酒の力で理性ちゃんの理性がほんの少しなくなり、椎名林檎の丸の内サディスティックを3人で歌いながら家に帰った。


遊び方は高校生とほとんど変わらないけれど、少しお酒が飲めるようになって、甘いものを食べて胸焼けをするようになった私たちのスクリーンに24歳という文字が光っている。