リハビリ人生

変な人間と日常の記録

気づかれないから今日も暗闇を歩く

広い世界。わたしの願い事はもしかするとおこがましいのかもしれない。
「私の存在に気づいて欲しい」
息を吸ってはいて、世の中にほんの少しの影響と変化を与えて、誰に命じられることもなく、あるがままに生きている私。

この世界でわたしはどれだけ小さいんだろうか。わたしがいなくなったその日、消費税が15パーセントに上がって、「タバコを買うのがまたしんどくなった」とどこかでニコチン中毒者が不服を漏らして、その彼女が「わたしの洋服にタバコの煙がつかなくなる日は近いかもしれない」と晴れやかな顔で笑ったりもするかもしれない。
もっともわたしが死ぬことと、消費税があがるかもしれないことと、タバコ吸いの彼女の溜飲が下がるかもしれないことは、何の因果関係もないので、これはわたしの妄想に過ぎない。

やっぱりそこまでの影響力を及ぼさず、知らない誰かに私を気づかれないまま終わっていく毎日がそこにあるのだと思う。

わたしの生き死にが世の中のタバコのモクモクに影響を及ぼさないとわかったうえで、やっぱりわたしは「私の存在に気づいてほしいな」と思う。


ほらまた消えた。


職場でわたしがまだ奥の個室に入っているのに、用を済ませてトイレの電気を消していく知らない誰か。
わたしはトイレでよくぼーっとしていて用を足したあとも座り続けているため、存在に気づかれない。

わたしはお前のために、わたしの存在をいつもアピールしている。
音姫を無駄に再生して音姫の電池量を消費している。トイレットペーパーホルダーを下からアッパーして紙を巻かずにカラカラの類似音を出す。謎の地団駄を立ててみたりする。
そうしていると、気づいてもらえて電気を消されないこともある。

けど今日も消えた。アピールが足らなかった。
今日もわたしの存在はなかったことになった。タバコの煙はモクモク出るし、トイレの電気は消えてしまう。


用は足してるけど、なんとなくブツは流さずとりあえず電気をつけに歩く。今人が来たら困る。なぜなら今わたしはいないことになっている。
いくつか並んだ個室を横切り、照明のスイッチまでは地味に遠い。自分を証明するスイッチまでの真っ暗闇な道のりを歩く。
この道のりがほぼ人生なんだろうなと思う今日だった。