リハビリ人生

変な人間と日常の記録

生姜焼きの味、ひねりのない言葉

一人暮らしをして自炊をするようになってから料理ができるようになるひとは多い。
私は逆に全く自炊をしない一人暮らしを経て、実家に帰ってから料理をするようになった。まったく料理を覚えない私に母親が、しびれを切らし夕飯を作る役を与えてくれた。

毎日ちゃんと料理をするようになり、そこそこだけど作れるようになった。
すると、母親が「あんたの生姜焼き美味しいね」と言ってくれた。
家にあったレシピ本から適当に作った料理だったけど、なかなかうまくいったらしい。
ほかのなにものでもない、わたしは生姜焼きがうまく作れたのが嬉しかった。


私は生姜焼きという料理にある思い出があった。

大学に入って、初めて彼氏ができた。なんだか難しいことをいつも言っているひとだった。お酒と哲学が大好きで、いつも言葉の合間と合間を探して難しいことを私に言ってきた。
私は一生懸命それを理解しようとして、彼の家にあった「プーさんを題材にした哲学書」みたいな本が簡単そうだと思って、借りて帰ったのだけれど、一ページめから文字が紙の上を滑って一つも理解できず、プーさんの挿絵だけ眺めてすぐに返した。

難しいことばかり考えている人だからか、彼はよく気持ちが落ち込む人だった。
付き合う前に相談に乗っていて、彼の難しい言葉と違い、私のなんのひねりもない馬鹿真面目な言葉を、彼は好意的に受け取って「おかげで救われた」と言ってくれた。後日、彼からの告白で付き合うことになった。私がOKを出したころには夜が明けていて、ベランダから見た空が紫がかっていたことを今でもなんとなく覚えている。

恋愛経験が0の私は、「自分と付き合うことで相手になにかしらの得がなければ、付き合う意味がない」というヤバい思想を持っていたので、彼の役に立つすべをずっと考えていた。

相手が難しいことを言うなら出来るかぎりそれを理解して寄り添う人間になりたいし、わたしの何も考えてないみたいな単純さが、明るく向こうに響けばいいなと思った。


でも、全然うまくいかなかった。
私が全然心を開けなかったのだ。
なぜだかすごく無理をした。いまはお酒が大好きなのだけれど、当時は全然飲めなくて、お酒が好きな彼に合わせてかっこつけてたくさんお酒を飲んだ。ウイスキーを買って、色んなジュースと割って飲む彼にがんばってついていこうとした。誰もそんなこと強要してないのに。みえはって無理して、トイレで気づかれないように音立てないように吐いた。

冗談もあんまり言えなかった。酔うと、おおげさに変なことを言って、人に笑ってもらうことが私は好きだし、思い切りふざけたいし、冗談だってたくさん言いたい。だけど友達の前でする冗談が、彼の前では全くできなかった。
アルコールの匂いが充満した部屋で、なぜかいつも身を固くしている私だった。


いつだったか、彼が体調を崩した。
おなかがすいたけど何も調達できず、ごはんを食べていないらしい彼にわたしは、めったに作らないごはんをタッパーにいれて彼の家がある山の上へと、自転車をこいだ。

生姜焼きと、ポテトサラダ。

私が行った時、かれは寝ていていつまでも起きなかったので、レンジの上にタッパーを置いて帰った。そのあとしばらくして、彼から一言「ありがとう」というLINEがきた。



しばらくして彼と別れた。
私はめちゃくちゃ彼のSNSの動向をウォッチする癖があったので、それも嫌に思われていたようだった。あと、あの日の生姜焼きを食ってしぬほど腹を壊したらしい。
別れを告げるLINEが来た時、これでもかというくらい泣いたし、自分の家に帰れなくて友達の家に逃げ込んだ。朝が来る気がしなかった。

「生姜焼き、まずかったんならその時にすっと正直に言えや!!!!」とか、言いたいことの一つも満足に言えなかったのに、一丁前に私は彼が好きだった。




私は生姜焼きが美味しく作れるようになった。
過去を振り返って、私はただ人と付き合うということに舞い上がってたんだろうなと思う。相手のことを考えてるようで、自分のことしか考えてない子供だった。

損得とか考える付き合い方も、おそらくしていない。
彼と別れてから、自分の思うように、やりたいことばかりをする毎日を送っているし、時々しんどいと思いながらも、あの時のあの分岐の選択は、間違っていなかったと思う。

最近その例の元カレから、「君の作る料理はほんとうにおいしくなかったけど、ほんとあの時は楽しかったよ。いまでもきっと好きよ。当然に有効的な意味合いね。」とLINEがきた。

ほんと、こいつ相変わらず何言ってるかよくわかんねーなと思って、既読スルーした。










ここで、私の地元にあるスーパーの曲をお聞きください。


youtu.be




エブリデイ!始まる毎日!動き出すエブリタイム!

いつものあの~時間が好き!

エブリシング!なにもかも君と、過ごしたい!

エブリナイ!愛する予感ラブリーエブリー!









スーパーのテーマソングってびっくりするくらいポジティブじゃないですか?

信じられないかもしれませんが、今日一番伝えたかった事はこれです。
あとは全部嘘です。



結局のところ、こんくらいが一番わたしにとってはちょうどいいらしい。