リハビリ人生

知り合いに「アケスケなブログ」って言われました。あけみって名前のスケバン?って思ってたら赤裸々って意味でした。

すずめちゃんはきっとタバコを吸わない

タバコを吸う女が好きだ。

 

綺麗な女の人や可愛い女の人がタバコを吸っているのを見ると、二割増で可愛くみえてしまう。似合っていても似合わなくても良い。
身体に悪いものをわざわざ取り入れて、その口からモクモクと煙が出るのを見ると、言い表しようがない興奮を覚える。
煙は煙なのだ。人に害を及ぼすそれを口から放っている。
その煙を放つ主体が綺麗であればあるほどに、モクモクと出てくるソレとのアンバランスさが目立ってひどく良いなと思ってしまう。

なんなら顔の造形が整っていると評されるかどうかが問題ではない。
わたしは女の人のタバコを吸っている顔が好きなのだ。
遠くを見つめていて、それでいて何も考えてないみたいなぽけーっとした顔をしながらモクモクと口から煙を出す横顔は美しい。

 

話を変えるけれど、好きな友達がいる。

名をすずめちゃんとする。
すずめが好きで、Twitterのすずめの鳴き声を「ちゅんちゅん」とただ呟き続けるbotに、独り言を話しかけているのを見つけた時は、わたしの指は笑いながらいいねを辿った。
彼女とすずめのbotをフォローしている自分だけが知ることの出来るやりとりがわたしは好きだった。
高校からの友達だけど、出会った時より一層すずめに似てきた気がする。

その子は本がすごく好きだ。
「本に対するお金を渋るようになったら、わたしは人として終わってしまう」
と古本屋の中ですずめちゃんは私に言った。
真剣に選んで本を買う彼女は嬉しそうだった。

すずめちゃんが買って教えてくれた本で特に印象に残っている本は、生き物についての豆知識が可愛い絵と一緒に乗っている本だ。その本の中にある「コアラはユーカリにふくまれる猛毒のせいでいつも寝ている」という豆知識をたぶんわたしは一生忘れないのだと思う。

 

すずめちゃんと、とある雑貨屋に行った。
その雑貨屋は、空き家を再生して作ってあり、足を踏み入れるとギシギシと軋む音が聞こえ、商品が置いてある棚にもホコリが少し被ってあり、売ってあるものは中古の文房具、古本、色とりどりのボタン、となんだかいるだけで“今”を忘れてしまいそうな場所だった。

彼女はそこで万年筆を見つけた。
その万年筆は年季が入っていて、色があせたりしていたんだけれど、何よりも目立ったのは掘ってある名前だった。
すずめちゃんは名前の入った万年筆を、すごく嬉しそうに握って、買うかどうか迷っている旨を伝えた。きっと買うんだろうなと思った。

その後、適当に見つけたカフェで、誰なのか分からない名前が書いてある万年筆を持って、「これで手帳に字を書くのが本当に楽しみ」とすずめちゃんは嬉しそうに語っていた。

インクを買ったすずめちゃんは「アランの幸福論を書き写す!」と意気揚々に宣言をした。一時間後に「書き味はどう?」と聞いてみると、「1時間も書いてたのか〜こんな感じ」とノートに書いた字を見せてくれた。

 そこにはアランの幸福論らしきものは書かれていなくて、一月半ばにロング丈のコートを買って、来年はショート丈が流行るかもしれないから少し不安だけど、しっかりしたコートなの、と満足げに綴る、彼女なりの幸福論があった。

 

 

すずめちゃんはきっとタバコを吸わない。

 

モクモクとどこかから今日も煙は出ていて、
タバコを吸わないすずめちゃんと、わたしはきっとこれからも友達なのだろう。