京都の老舗の喫茶店に行ってきた。
用があって京都には来ていたのだけれど、折角の京都なんだから楽しまないと勿体ないだろと思い、いくつか観光地に行ったりなんかもした。伏見稲荷の千本鳥居は「千本以上あんなこれ」と思ったしタクシーの運ちゃんにも「千本以上あるよ」って言われた。
京都っぽさを味わったり味わなかったりしながら、数日を過ごしその喫茶店にも興味本位で訪れた。
「レトロ喫茶。クラシカルな雰囲気で安らぎのひとときを」
みたいな文言がるるぶには乗っており、期待に胸を踊らせる私。
~カランコロンカランコロン~
店に入ると、シックな赤を基調としたテーブルやイスが並んでいて、一つ一つの物がその空間を演出していて、レトロさを実感した。さっきまでビルが立ち並ぶ現代にいたのに、なんだかタイムスリップしたみたいだった。
「お二階へどうぞ」
その日は世間はクリスマス。年配の昔からの常連客らしき人もいれば、若くて写真を沢山撮る女性2人組なんかもいて、店は賑わっていた。
2階へとあがった、その時だった。
「ドドドドドドドドド」
勢いよく階段を駆け上がってくる音。
「イラッシャイアセッッッッッ」
店員のモノマネをするラーメン屋のマスコットキャラクターのインコみたいな声がすると思ったら喫茶店の女性店員だった。
ものすごい勢いで現れた彼女は、席へ案内してくれると、またものすごい勢いで2階の厨房に行き、ガチャガチャ言わせながらコップを用意している。
「コチラドウゾッ!!!(水置きながら)ご注文はおきまりでしょうか!?!!?」
勢いと圧がとにかくすごい。
注文を伝えると威勢よく返事してドタバタとまた彼女は駆けていく。
さっきまで、昭和初期のゆっくりした時間にいると思ってたのに、急に慌ただしいスピーディな現代社会に蹴落とされた。世間はクリスマスなんだ。外に出たらそれはもう街に人にと盛り上がっている。安らぎの空間を求めにここに来たんじゃなかったのか。インコの姉ちゃんは何にそんなに焦らされてるのか。
「イラッシャイアセッッッッッ!!!!!!」
インコの姉ちゃんの声が響く度に、店内の時空は歪む。
静けさと安らぎを、騒々しさというブラックホールに吸い込んでいく。
~カランコロンカランコロン~
紅茶飲んですぐ店を出た。
理由は、インコ姉ちゃんは、老舗料理店で働いてた時に「イラッシャイアセッッッッッ!」って客を迎えたら、「1回ラーメン屋のノリ忘れてくれる?」って裏で店長にメチャクチャ怒られてた自分まんまだったから