リハビリ人生

知り合いに「アケスケなブログ」って言われました。あけみって名前のスケバン?って思ってたら赤裸々って意味でした。

ジムで女のケツを見るな

最近ジムへ行っている。


目に見えて分かるほど肥満体型というわけではないが、普段着痩せしてる分脱ぐと負の「私脱いだらすごいんです」を体現している。ガッカリを略した方のガリだ。ジムに行けば運動不足も何もかも解消してくれるはずという期待を込め、入会をした。

 

その日もいつも通りランニングマシーンに乗っていた。初回の日、ジムのスタッフが出払っていてろくにマシーンの説明を受けなかったので、アホの一つ覚えのように延々とランニングマシーンに乗っている。
疲れるが、疲れより汗をかく気持ちよさの方が上回っている気がする。

ランニングマシーンのスイッチを切り、「ランニングマシーン降りた後ってメチャクチャ歩くの早くなったように錯覚するよな」とボンヤリ思いながら休憩所のベンチに座った。


?「君さあ、走り方ヘンだよ」

 

いきなり話しかけられ、驚きつつ振り向いた。
そこには青い蛍光色のタンクトップを着た、筋肉質のオジサンが立っていた。

 

・・・・・・誰???

入ったばかりのジムに知り合いはおらず、見ず知らずのオッサンに話しかけられたことに戸惑いを感じた。

 

筋肉オジサン「僕、このトレーニングルームから君の走り方ずっと見てたんだけど〜」

 

見るな。そこそこ距離のある位置から。

 

筋肉オジサン「君、着地する足が内向きになってるからX脚気味になってるんだよね。それだと膝を痛める可能性もあるから気を付けた方がいいよ。」


おじさんは私にジェスチャーをしながら説明をしてくれた。確かに私は小さい頃からX脚がコンプレックスで何回も直そうとしたものの気を抜くと出てしまうのだった。おそらくがむしゃらに走っていた所を見られたのだろう。
ありがたいものの、私にとってはある意味分かりきった指摘であるため、どこか気まずさを感じ「ありがとうございます、気をつけます〜」と言いながらトイレへそそくさと向かった。


トイレから出る。
オジサンはトイレ近くのトレーニングマシーンを使っていた。「なんだったんだ」と思う反面、言っている相手がムキムキであることにジワジワと説得力を感じていた。

私は再びアホの一つ覚えでランニングマシーンに乗る。
「まあ実践してやらんこともないが?」と言わんばかりに着地の位置を少し意識してみた。元よりまっすぐ歩くのが苦手なので、意識したところですぐに改善できないのは分かっている。
まあおじさんももう見てないだろう、と視線を少し後ろにやった時だった。


私の真後ろの腹筋トレーニングマシーンにオジサンは移動していた。


・・・・・・・・・おや?

いやいや偶然だろうと思いつつ、なんとなくランニングマシーンを降りてストレッチゾーンに移動する私。何の気なしにバランスボールに乗る。
たまたま腹筋を鍛えたくなったのだ。はたまたオジサンのルーティン移動がかぶっただけかもしれない。気のせい気のせい。
自分に言い聞かせながら後ろを見る。


オジサンは私のすぐ近くで腕を鍛えていた。

 


なに????ついてきてる????よな??
バランスをとりながら考える。気のせいという可能性が勢いよく減っている。
別の器具に移動する。
乗ると小刻みに揺れる立っているだけの器具だ。(私は今のところこれとランニングマシーンしか使い方が分かっていない)
2分くらい経ったあと、ブルブル揺れながら少しだけ振り返った。

 

オジサンは真後ろで腹筋を鍛えていた。


いる〜〜〜!!!!

真後ろで腹筋を鍛えるな。ていうかさっき鍛えてただろそこ。もういいだろ鍛えなくても。

親切なオジサンこと、変態マッスルタンクトップは私が移動する度に私の近くに移動しているらしかった。
なにそれ?ジム内ストーキング?どういうタイプの刑事罰

そして改めて、自分が今トレーニング器具によって身体が小刻みにふるえているという事実に気づく。

もしかして今オッサン、腹筋を鍛えながら私のブルブルしてるケツを見てる????


位置的には私がおしりを向けているのは確かだ。見られているとしたら、ジム内ストーキングに加え、オジサンには別の重罪が課せられないと困る。
ただ、私がこの構図を俯瞰して認識していることにより、ここには「腹筋を鍛えながら女のケツを見てるオッサンとオッサンにふるえるケツを見せつける女」という新たな構図が発生するのである。私の心はふるえた。(ケツはずっとふるえている)
私はこんなことをするためにジムに入会したのか?何のために生まれて・・・何をして喜ぶ・・・・・・・・・・・・


私はスイッチを切り、更衣室へ向かった。
ジム終わりに鏡を見るとなんとなく痩せている気がする。今日あったことは忘れよう。何が悪い夢でも見たのだ。

そう思いながら着替えて、更衣室を出た。
出口へ向かう前に、ジムの中を見る。


そこにオジサンの姿はなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・マジの夢?


「ついてこられている気がする」「見られている気がする」は結局全部自分しか証人がいない話だ。窓ガラスにうつった、いつもより化粧の薄い冴えない女の姿を見る。ここにいるのは自分と向き合い、己を高める人間だけだ。

次も楽しく運動しに来よう。着地の位置に気をつけながら。
そう思いながら家へ帰った。

 

 


後日、同じジムに行っている母親の友人から、「ジムに新しい女が来る度話しかけて、後をつけまわしてくるオジサンがいて、あまりにもしつこいからスタッフにも言ったことがある」という話を聞いた。


夢であれよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

血尿元年

血尿が出ている。

あ、まちがえた、新年あけましておめでとうございます。

ものごとには順番があるからね。挨拶があってから血尿の報告。これを間違えたらいけない。社会人の常識。

晦日の夜から血尿が出ている。
紅白歌合戦の裏で、紅白尿合戦をしていた。真っ白な顔VS真っ赤な尿!優勝は・・・赤!血尿!やったーーーー!!!全員殺す!

調子乗って昼に大量に酒を煽っていたのが原因だった。でもさあ、酒飲んでただけよ?そこまでする必要あるかね。尿を出す度、メチャクチャ痛い。「み゛ょ・・・っ」って声出るくらい痛い。トイレに行く度誰かに手を握っててほしくなるくらい痛いのよ。ちょっぴりお酒を飲みすぎたからってそこまでする必要ある?
ゲンコツくらいでいいじゃん。血尿出させんでええやん。血尿。思ったより字面すごいな血尿って。


年を越して以降も血尿が止まらないので、祖母の家に行って、「あけましておめでとう」を言ったあと、二言目に「血尿が出てる」と親戚一同報告した。
新年の挨拶を先にするという順番は守れたけど、相手の言葉を待たずに血尿の報告をしたせいで、相手の一言目は「血尿!?」だった。血の轍である。


お昼になる前に病院に行った。

新年に空いている病院は当番院でいつもよりとても混んでいる。スリッパすら履けなかった。
1時間待って問診票を書き、それから1時間待って診察をしてもらった。

朝から働きづくしであろう医者は「え〜と」と言いながら私の問診票を見て2度見していた。
病院にやってきてから2時間経過している。スムーズな診察をしてもらおうと、端的に症状を話した。


私「大晦日の昼にメチャクチャ酒飲んで、夜に気分が悪くなって吐いてて、尿意を催したから試しにおしっこしてみたらメチャクチャ血尿出ました。」


医者「ブフッ」


おい、笑うなよ。
急に酒飲みのバカがきたからって笑うなよ。
元旦に血尿出てんだぞ。真剣だよこっちは。


私「熱もあるんですけど、インフルじゃないですよね・・・」

医者「いや、インフルじゃないでしょうね、ふふ」

働き詰めだったのだろう。
元旦の忙しい病院に唐突に酒呑みのバカがやってきたことがツボにハマったようで、その後も診察をしながら医者は終始ニヤニヤしていた。


診察後、会計になかなか呼ばれることがなかった。普段はこんなに人が来ることがないのだろう。受付は人数不足で完全にてんやわんやしていた。

「〇〇さーんタミフル出しときますね」
「△△さんタミフル出しときますねお大事に」
「✕✕さん体温測って問診票書いてくださーい」
「◽︎◽︎さんタミフルです〜」
「あ、こんにちは〜こちらに名前を書いてお待ちください」
「☆☆さんタミフル出しときます〜」


てんやわんやである。待たされる患者も、処方する事務員もみんな殺伐としていた。

あとタミフル処方されすぎじゃない?全員じゃん。全員タミフル処方されて、壁にぶつかりながら部屋を出ていってるじゃん。

町中のインフルエンザの人間がこの部屋に集められている。
で、なんだっけ?私の病気、膀胱·····炎?
あの、帰る時「タミフル出しときますね〜」って形だけでも言ってくれないかな・・・
そしたら私、壁にぶつかりながらフラフラと帰るからさ・・・
3時間待って、膀胱炎の薬処方されるってなんかさあ、新年早々負けてるじゃん。もうこの際タミフルくれよ・・・・・・・・・。

それか、この際受付手伝おうか?
正直めっちゃ元気だし。膀胱に菌が入ってる以外は至って健康だし。
全員にタミフル配って回ろうか?それくらいの働きするよ。インフルに比べたら、膀胱炎って、普通の人、じゃん。



病院を出たのは、来院した4時間後だった。冷たい空気が頬を撫ぜると、信じられないくらい空気が美味しく感じた。

2020年。今年、26歳になる私は、
酒を飲みすぎて血尿を出している。

「清く正しく生きよ」なんて目標は到底似合わない。出来ることならば健康で、少しでも人らしい人生を送れるよう、リハビリを続けていきたい。あと、良い女にもなりたい。26歳だし。綺麗で魅力的な女になりたい。冗談とかじゃないんで、目、見ます?めっちゃ真剣なんで。

ということで、新年のご挨拶と変えさせていただきます。

今年もピリきゅう、そしてリハビリ人生をよろしくお願いします!



ということで、私は赤いお花をつんできます。ふふ♡(あ、良い女だ!)

私に読みにくい文章を書かせてくれ

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読みにくい文章が読みたくない人は、ビックリマークがたくさんある所までスクロールをしよう!


今年に入ってからライターらしきことをさせていただいている。

ライターらしきという遠回しな表現をわざわざしてるのは、妙なおこがましさを感じているからだ。私風情がライターを名乗りだしたら「調子乗ってんじゃねえぞ!!」誰かが怒り狂ってうちの家までライター持って火をつけに来るかもしれない。

ナンセンスダンスというサイトにて、エッセイ記事も含めて7本書かせてもらった。

nonsensedances.com
↑最近書いた記事


webで記事を書いてみたいというのは、私にとって夢だったので、こういう形で関わらせてもらってることについて頭が上がらない。代表がいる方向に向かって毎日土下座しながら床をなめている。これは嘘です。嘘はやめよう!

そして、この記事は千鳥あゆむさん主催のweb記事アドベントカレンダーに登録している。
軽い気持ちで登録させてもらった後から、「ほんとにいいの?」という気持ちで毎日を過ごし、他の記事があがる度冷や汗をかき、更新日の前日である今日酒を飲みながら「いよいよこれは行方をくらますしかないな」と思っている。すんでの所でやっていない。

ほんとは木に「人生は不可解であり、web記事とは愛である」と刻んで書いた画像をアップして、そのまま華厳の滝に飛び込もうと思ったが、各方面に失礼を働くことになりそうだなと思ったのでやめた。(えらい!)


えらいのでそろそろ本題にはーいる!(えらーい!)



私は日記文化を愛している。

その中でも、テキストだけで笑いをとれるようなそんなコンテンツにずっと憧れを持っていた。
だからこそ、ブログを始めて、今までほとんど画像を使うことはなかった。画像をいれることは分かりやすいし、笑いどころも判断がしやすいと思う。しかし、それをやると、テキストへの重要度が低くなって、最後には文章を読み飛ばされてしまう気がするのだ。

web記事における画像の、インパクトや面白さが際立てば際立つほど、文章そのものの面白さが目立たなくなってしまうのが悲しいと感じていた。(私の文章がそもそも面白いのかどうかはとりあえず遥か遠く隅に置かせてもらう。)

似たような理由でこのブログでは分かりやすい見出しもほとんどつけてはいない。


私にとって、面白いテキストは読みにくい文章だった。見出しも何も無い、文字の太さで強弱もつけない。ただ文字だけが広がっている壁のような文章。
読みにくいからこそ、1つも読み飛ばさないで読み込もうとすることができる。
読み込むからこそ、言葉そのものの面白さで笑ってしまう。


私が読んできた面白い人たちの文章は、言葉のインパクトや、ワードセンス、展開の仕方のみで面白さを作り上げていた。それが面白かったし、カッコ良いなと思っていた。
そこに、日本語だからこそ成し得る表現の妙もある気がした。この文化は永遠になくしてはならない文化だと思っている。




ここでもう一回、私が書かせてもらってるナンセンスダンスの一番最近の記事を見てみよう!


nonsensedances.com



お前めっっちゃ漫画書くやんけ。

イキイキと漫画書かせてもらっとるやんけ。


ということで、これがさっき「日本語の成し得る表現の妙」とか言ってた奴の記事です。お前は一生偉そうな口を開くな!

言葉を大事にしたい、テキストを重視したいと言っている割に、「読みやすさ」や「需要」を考えた結果、私の記事からテキストは減っていった気がする。

写真やイラストが持つ情報量は多い。多いがゆえに、文章だと何文字も書かなければいけないことが、写真だと一枚で済むし、記事を読むトータルの時間も短縮される。至極当たり前のことである。曲がりなりにもweb記事を書く立場として、それを私は「読みやすい」と解釈している。そして、その手法を易々と取り入れている。

もちろん、今でも素のテキストが面白くて、テキスト重視で記事を書かれてるライターさんもいらっしゃるのは分かっている。
でも、そうやって読まれるライターとして残ってるのは本当に力のある方数人なんだろうなと思う。


「言葉を大切にしたい」という気持ちに嘘はない。


しかし、テキスト重視の文化を大切にしていきたいと思う反面、メディアにおいては分かりやすくて手早く読めて面白いものが求められていることを、私は内心分かっていたのだった。

この前現役の高校生の集団と話す機会があった。話の流れで、ネットの話になった時、彼らは「2ちゃんねる」のことを「NHKのこと?」と私に聞いてきた。

自分が当たり前のように見ていたものは、当たり前ではなくなるし、いずれ誰も興味を示さなくなるのだなと思った。



時代に合わせることは悪ではないし、むしろ必要なことだと思う。
ネットはもはや、一部の人のものだけが読む専売特許ではない。皆に開かれてる。
だからこそ、

「分かりやすくて」「すぐに読めて」「面白い」

そんなweb記事はきっと増えていく。
私も機会をいただけたら色んなものを書いてみたい。




でも私はきっとここに戻ってくるだろう。
戻ってきては、壁のような文章を書いて「ここの言い回しが上手くいった気がする」と一人で面白くもない独り言を書きづけたい。
「私の手でテキストのみの記事を守りたい!」なんて大それたことを言うつもりはない。でも、こうやってネット上の面白い文章が好きで居続ける人間が居るというだけで、何か違うんじゃないかと信じている。



日が当たらなくても良い。
たぶん、文章は太陽の下で書くより、日の当たらない場所で書く方が面白いものが書ける気がする。
そしていつかブログを読んでくれてる人に会った時に、「あの記事は言ってる意味がよく分かりませんでした。」って今日の記事について言われたい。


その日までは、と。太陽の下と日陰を行ったり来たりして、頭にキノコを生やしながら今日もジメジメ生きていく。














!!!分かりやすくて早い情報!!!

広島出身の酒好きライターピリきゅうちゃんから耳寄りの情報!

「記事を書きながら酒を飲みたい」
「お酒飲みながらの方が面白い文章書ける気がする」

そんなあなたにオススメのおつまみはこちら!

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イカ天瀬戸内レモン味

イカ天の海鮮のうまみが凝縮されて、レモンの酸味もきいてて本当に美味しい!
本当に最高!さっぱりしてるので、どんなお酒にも合います!

最高〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!




ゴチャゴチャ言いましたが、イカ天瀬戸内レモン味が美味しいのは本当です。
それだけは、信じてください。




この記事は千鳥あゆむさんがやっているWEB記事に関するアドベントカレンダーに参加しています。色んな話読めてメチャクチャ面白いのでどうぞ・・・・・・

adventar.org

大きな声でおめでとうと言ってくれ

また1つ歳をとった。

社会人となり、20代も折り返しとなる誕生日に学生の時のような盛り上がりや感慨はない。
もうすっかり大人なのだ。

大人としていつも通りの一日を過ごす準備は整っていた。

 

前日。私、こと大人の女はいつも通り8時間睡眠をきっちりとるために21時半に就寝する。0時に年齢が変わるが、そんなことより明日健やかに過ごすための睡眠が大事だ。

 

5時半。目を覚ましイソイソと準備をして母親に「トリックアート」と言われる顔面塗装を仕事用に軽くしてラジオを聞きながら出勤。

 

7時半。職場について菓子パンをモリモリ食べる。何の気なしにスマホをチラ見する。待受画面にデカデカと1人表示される時間くん。
なんでもない一日を示す。

 

10時。そこそこ忙しい一日だ。やっと席に座る。

 

高校の時、お菓子を持ってきてはいけませんというルールがあった。しかしみんな、なんなかんやカバンの中にマイフェイバリット菓子をもっていた。誰かの誕生日になると、持っていたお菓子の箱に即席でメッセージを書き、先生に見つからないように渡していた。ただのお菓子箱に数行簡単なメッセージが書いてあるのが、なんだか嬉しくて、なかなか捨てられなかったのを覚えている。

 

来る途中、コンビニで買ったチョコレートをつまみながら、そんなことを思い出す。

 

 

13時。いつも通りヤフーのエンタメニュースのコメント欄の悪質さを眺めながら黙々と昼食を食べる。

 

 

14時。今日は全体研修で自分の担当がある。用意してきた資料を説明したら、外部から来た偉い人にチクチク指摘をされ、小声でへらへら言い訳をしながら乗切るという素敵なイベントだった。他の人は30分くらいなのに私には1時間くらい持ち時間があった。なんてすてき!

 

 

15時。鋭い針で弱い所をチクチクされ続け、穴だらけになった。

 

何の気なしにスマホを見る。家族からLINEが来ている。友達から全然連絡がないのは仕方がないと割り切る。みんな大人だし、社会人だし、こんなものだ。なんなら私も友達の誕生日忘れてLINE送らんし。

それよりだ。

 

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最近スマホデビューしたばあちゃんからのメッセージである。
誤字がひとつもない。歴史的快挙である。

 

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何ヶ月か前のLINEのやりとりを見るとその成長は歴然だ。間違いなく進歩している。
知らん偉い人に蜂の巣にされている孫を横目に、成長し続ける祖母がいる。逆に自信をなくすような気がする。

 


17時。今日はまだやることが多い。紅茶をいれてチョコをつまむ。
家に帰っても特になにも予定はない。ひとりでに生まれる予定などない、

 

 

18歳の誕生日、仲の良い友達がサプライズで私の好きな先生たちからメッセージカードを集めてコルクボードに貼ってプレゼントしてくれた。人生でしてもらった中で1番大きなサプライズだった。

 

切り絵が得意な生物の先生が、表からは触覚のみ見えて裏返すとゴキブリが現れるメッセージカードを自作してたのは単純に最悪だなと思った。
いつもカッコつけてる数学の先生が、「Limit一年夢∞(無限大)にせぇよ!」と書いていたのはマジで恥ずかしいなコイツと思った。

 

夢を無限大に叶えてるかどうかの自信はないが、歳を重ねて大人になっていると思う。
さっきジメッと先輩に怒られたけども。
階段で一段踏み外して思い切り尻を打ったけども。

 

大丈夫だ、私は大人だから・・・
大人はこんなことでめげないから・・・

 

 

18時。来週のために色々やっておくことがあるので、帰れない。

 

というか、帰ったらさっき怒られた先輩に「あ、帰るんだ、へー」というジメッとした目線を受ける気がするので、帰れない気がする。

 

自販機で1回何か買いに行こう。そう思って部屋を出ようとした。

 

「あ、お疲れ様です。」

 

違う部署にいる同期だった。お疲れ様ですと挨拶をして通り過ぎようとすると、同期が思い出したように声をかけた。

 


「ピリきゅうさん、今日誕生日じゃないですか?おめでとうございます!」

 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


バレた〜〜〜〜〜〜〜〜〜?????

 

いや〜〜〜〜誕生日じゃない顔してたんだけどね〜〜〜〜〜〜〜?????

バレないようにしようと思ってたんだけどね〜〜〜〜???

 

いや〜〜〜〜


バレちゃったら仕方ないよね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?????!

 

 

「あ、そうなんですよーへへっ」と返した私に、同期はLINEのタイムラインで見たんですよ〜と続ける。今日初めて現実で誕生日を指摘された。すごいぞLINE。よくやったLINE。

 


「いいですね〜誕生日ってことはなんか予定あったりするんですかー?」


なんもな〜〜〜い!
なんもないよ〜〜〜〜〜〜〜へへっ


心の中ではテンポよく返事を返す私がいるが、現実には誕生日を指摘された照れくささで「へへっいやぁ・・・」と煮え切らない返事をする私しかいない。

 

私は何の気なしにチラッと部屋にいる先輩を見る。こちらの様子は気にしてないかのごとくパソコンを見ている。

 

私は同期のさらなる言葉を待っている。

 

 

 


「じゃ、おつかれさまでーす」

 

 


・・・・・・・・・・・・えっ!

 


ちょ、ちょっと〜!!!!!!

同期〜〜〜!!!


もっとでかい声で、誕生日って言ってよ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!

 

皆に聞こえるようにさぁ〜〜!!!

この人今日誕生日で〜〜〜す!!!!!って指させよ〜〜〜〜〜!!!!!

 


『おっ!あいつ誕生日なんか!』って皆に思わせてよー!!!

 

『じゃあ今日研修でボロボロだったのも許されるし、印刷機壊してたのも許されるな』って奴らに思わせてよ〜〜〜〜!!!!


おーーーーーい!!!!!
同期ーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!

 

こんにちはーー!!!!!!!!
誕生日の人でーーーーす!!!!!!!!!!


だれか〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 


「お・・・おつかれさまでぇ〜す・・・」

 

 

 

 

 

20時。

でかい駐車場に車を停め、職場の冷凍庫からコッソリ盗んできたハーゲンダッツを食べる。

 

「うめっ」

 

20代折り返しても社会人何年目になっても私は全然大人ではない。涼しい顔して一日を過ごしてもずっとちょっとソワソワしている。
でも、なんやかんや夜になって連絡をくれる友達はずっとずっと温かい。

 

ハーゲンダッツは冷凍庫から出して、しばらく車で連れ出したくらいの溶け加減がちょうどとても美味しかった。

 

次職場に行ったら新しいハーゲンダッツを買って入れておこう。

大人としてそう思った。

 

官能小説用語表現辞典を買いました


尾道に紙片という本屋さんがある。

 

ご飯屋さんの横の細い路地を、まっすぐ行かないとたどり着けないので隠れ家的な存在になっている。私はそこが大好きなので、尾道に行くことがあればいつも行っている。


「私は何が何でも千光寺の山に登りたいので、2人は私を置いて紙片で本でも買ってカフェなどでゆっくりしてほしい」と言ってお友達の理性ちゃんとは別れ、もう一人一緒にいたすずめちゃんと本屋に向かった。なにがなんでも寺に登りたい女を引き止める術は特にない。自然と別行動ができる関係性は心地よい。

 

紙片に来た。今日も素敵な空間である。
洒落た音楽が流れる中で本を選ぼうとすると、なんとなくいつもは手に取らない本をとってしまう。

ふとレジの方の本が積みあげられているスペースを見ると、すずめちゃんが信じられないくらいニヤニヤしていた。

 

「なに読んでんの?」

 

そう言いながら近づいたら、すずめちゃんが持ってる本の表紙が目に入った。

 

 

官能小説用語表現辞典

 


「いや、何読んでんの??????」
もう一回言った。

このオシャレ空間で官能小説用語表現辞典を手に取り堪えきれないという顔でこちらを見てくるすずめちゃん。

 

「いや、あのね、とりあえず読んでから言って」

すずめちゃんに手渡されて、本を開いてみる。

 


鉄梃魔羅(かなてこまら)

 

これでもかというくらい強そうな表現の男性器名称が目に飛び込んできた。

この用語辞典。女性器、男性器のあらゆる表現が2300語字に渡り載っており、用例付きで紹介してくれているのだ。

「いや、メチャクチャ面白いじゃん」
「面白いでしょ!?」
「これ買うしかないな・・・」

 

2人でコソコソと言っていたら、店長が小声で「在庫ありますよ・・・」と言ってくれた。
2人で官能小説用語辞典を取り合ってるように見えたのだろう。「我々は20半ばにして何をやっているんだろうか・・・」と恥じらいを持ちながら、「ひとつください」と迷いなきまなこで言った。

 

 

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ここからは官能小説用語表現辞典にあったピリきゅうが好きなワードを紹介します。

中身のネタバレになりますので、買って熟読したい紳士淑女の皆様は飛ばして結構です。

 

 

 

ピリきゅうが選ぶ!

最高の官能小説用語!

 

 

 

 

 

〇女性器編〇

「小さな島」

(出典:豊田行二『野望証券マン』)


島好きのわたしには見逃せない表現でした。使い方は「洪水の中に小さな島を探り当てた」らしいです。上陸しないと島には何が眠ってるか分からないことにも通じており、なかなか奥深いですね。

関係ないですが、大学時代バイト先の先輩に酔って初体験の話を聞かされた時、「俺は穴蔵の中で宝石を掴んだ」と言ってました。あの当時はマジで何言ってんだろうと思いましたが、今では一体どういうことなんだろうと思えますね。

 

 

 


〇男性器編〇

「形状記憶合金」

(出典:南里征典『特命 猛進課長』)

 

初めて見た時は、まあなんて上手いのだろうと思いました。「わあ硬い!これって形状記憶合金みたい!」という使われ方をしてるらしいですが、そんなハツラツとしたテンションで出るワードなのか形状記憶合金。


ちなみに女性器を表すワードは、どこか全体的にどこか儚げで頼りないのに対し、男性器は常に屈強な感じがしてました。
男性像女性像が現れてるみたいで面白いですね。

最後は絶頂表現編です。

 

 

 


〇絶頂表現編〇

「浮遊するっ」

(出典:安藤仁『花唇の誘い』)


浮遊はしないだろ。

行為に及んでる最中相手が浮遊したらメチャクチャ怖い。ポアと叫ぶ他ないだろ。

 

 

 


ピリきゅうが気に入ったのは以上です。


官能小説ってエッチなだけじゃなくて、他の小説にはない言語感覚があって、その言語感覚に周波数を合わせようとすることによって、世界にズブズブと惹き込まれるからすごいなと思う。
作家の執念と、性の面白さが知れる本でした。

 

他にも2300語の言葉が並んでるので、皆さん買ってください。

枕元に置いて毎日ひとつ覚えよう。
合コンでお気に入りの男性器の呼び名を山手線ゲームで言っていこう。

 

せーの!パンパン!鉄梃魔羅(かなてこまら)!

 

https://www.amazon.co.jp/dp/4480422331/ref=cm_sw_r_cp_awdb_c_82MxDbE8BK1CF

馬鹿こそ人に優しくあれ


約束をした相手が時間に遅れた時、怒りの感情を抱いたことがない。


そもそもその状況でたいていの人は「全然大丈夫だよ〜」と言うだろうし、たかが待ち合わせで「遅れてんじゃねえぞコラ!!!」とブチギレる人はいないと思う。
人によっては少しイラつきながらも「全然大丈夫」の一言で感情を隠す人もいると思う。

 

私はというと、本当に一ミリも怒っていないので、いつも「いかに本当にキレてないか」を証明するために必要以上にヘラヘラしたりふざけて変なボケをかましたりする。そんな相手への気遣いをするくらい本当にキレていないのだ。

 

人生で友人に怒った経験が本当に少ない。
メチャクチャな寝坊をされても、自分の車を運転して軽く傷つけられても、物をなくされても、マジで全然キレてない。

 

 

その理由を昨日今日と私がやってきたことを羅列しつつ、説明したいと思う。


・大学の友達と遊ぶ約束をして、とても楽しみにしていたくせに、交通の便をとるのをギリギリまでしていなかったので、2倍くらい高い方法で行くことになる
・帰りのバスの時間を間違えていて友人たちを焦らせる。楽しかったのに妙にバタバタした終わらせ方をする
・車の鍵をなくす
・車の鍵を探すために昨日家に泊まらせてもらった友人や、車に乗せてもらった友人に連絡して車の鍵を探させる手間をかける
・車の鍵が見つからないので、鍵屋に連絡をして来てもらう
・鍵屋の車がデカくて近隣の住民に迷惑をかけ、何回も謝る
・車のセキュリティがけたたましい音を鳴らし、家から出てきた近隣の住民に何回も謝る
・鍵屋の人が暑い中作業を終わらせてくれて、料金の支払いを済ませる。
・車のスペアキーがいきなり見つかる

 

 

ギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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ア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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み゙ょーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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お分かりいただけたであろうか。
そう、バカなのだ。
わたしはシャレにならんくらいバカである。
勉強ができるできないとかではなく、様々なことの要領があまりに悪すぎる。

前にも書いた通り、このブログの名前の由来は「人間生活を送るのが苦手な私が、人間らしく生きるための人生をかけたリハビリの記録」である。

 

他にも今ゴミ箱の中に、Amazonの不在届けの紙がメチャクチャたくさんある。不在届けに連絡するのが苦手すぎて、全く連絡が出来ず保管期間を過ぎたため今わたしが注文したボディミストはAmazonの元へ戻っていて、Amazonの人に「????」という顔をされているに違いない。

 

ダメさを挙げ始めたらキリがない。
それでもなんとなくのその場しのぎでこれまで人生を生きてきたのだ。
その理由はなんだというのだ?

 

そうだよ!!!!!
私に迷惑かけられながらでも一緒にいてくれた家族や周りの人間がいてくれたからだよ!!!!!

人は絶対一人では生きていけないし、私は典型的なソレである。
これまでもどうしようもない私は色んな人に助けられてきたし、これからも助けられて生きていくんだと思う。

 


ふりだしにもどる。

 

友人がこちらにむかって走ってくる。約束の時間を10分過ぎている。「ごめん、寝坊しちゃって〜!」と謝罪の言葉を述べている。


怒るはずがない!!!!!!!!!!!!
マジでキレてないのでものすごいヘラヘラしながら「大丈夫だよ〜」と笑う。なんならちょっとボケながら。


私が一番色んな人に迷惑かけてると思ってるから、多少の迷惑を皆かけて欲しいと思う。そうじゃないと釣り合わないから。
申し訳なさそうな顔はしてもいいけど、私もその気持ちは分かるから、加害者の痛みを分け合おう。

 

馬鹿こそ人に優しくあれ。

そして馬鹿にもやっぱり優しくしてほしい。


鍵には馬鹿みたいにデカいくまのキーホルダーをつけた。くまが大きな目でこちらを見ている。明日も頑張らねば。

車上荒らしにあわなかった話

 

「理不尽な出来事を乗り越えていくのが人生である。」ピリ・キュ・チャーン(1994~)


結構な頻度で休日出勤がある。忙しさに余裕がなくなる時もあるが、やりたい職に就けている充実感の方が今は勝っている。
田舎なので様々な生き物がおり、休日に来て職場に侵入したハクビシンを追い出すという緊急業務をした時は「わたしはこんな所で何をやっているんだ」という気持ちになったりもした。

その日は、家から車で2時間半ほどかかる場所に行っていた。見知らぬ土地である。未だに慣れないヒールを履いて仕事をする。ダルいなりにも結構為になる話をフンフンと聞ける仕事だった。なんやかんや自分の成長につながっていることをぼんやり感じる日々である。目に見える成果はないものの、休日出勤の一日の終わりに達成感を感じる。
「疲れたけど良い一日だったな〜帰って淡麗グリーンラベル飲むぞ〜」と思い、駐車場に向かった。

すると、一緒に行っていた同僚が、先に車へ向かい私の車を見て、そこそこ大きな声を出した。

人というのは思いもよらぬ出来事に出くわした時、どうしたらよいか分からなくなるものである。

私は車を見て声は出なかった。
ただ脳内にでかめの文字が流れた。


窓、無〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(これくらい)


車の窓がなかった。

いや、正確に言うとあった。
ただ、私の「窓」という認識のソレよりかは遥かにバッキバキになって存在していた。
割れていたのだった。


「はい、それでは撮りまーす」

そこからしばらくして、気づいた時には私は、窓ガラスが割れたマイカーとツーショットを警察に撮られていた。
どんな顔をしていいのか分からないので、「にへぇ・・・」と口角を微妙にあげておいた。
笑わないカメラマンは無言で数枚写真を撮る。

「これ割れていたと気付いて動かしてはないんですよね?」
私の駐車が下手くそで、白い線から微妙にはみ出していたので、3人の警察に代わる代わるにと同じように聞かれた。
わたしの駐車が下手なだけです・・・へへへ・・・と私はまた気まずい笑顔で笑う。

駐車場に監視カメラがついていたため、その映像を頼りに今後捜査が行われるとのことだった。
ただ、具体的に捜査をするためには被害届を出さねばならず、手続きには数時間ほどかかると言われた。信じられんくらいなにもかもがダルい。
「後日また被害届出しに来ます・・・」と約束して、その日は帰ることにした。割れた窓ガラスをビニールでくるんでガムテープを貼った状態で走ったら「ズババババババババババ」とビニールが風でけたたましい音をたてていた。あと職場を経由した時に死ぬほど虫が入った。

そのまま車屋に行って、おでこからキューピーマヨネーズみたいなチョロ毛が生えているオジサンに、苦手なコーヒーを出されながら「なんでこんなビニールのかぶせ方したん?馬鹿なん?」となぜかメチャクチャ笑いながら小馬鹿にされた。知らんがな。正しいビニールのかぶせ方とか知らんがな。
完全に疲れていたので、さほど答えもせず、オッチャンのチョロ毛をぶち抜く妄想をしながらコーヒーを飲んだ。

代車は継ぎ接ぎのロボットみたいな車だった。エンジンはけたたましい音を鳴らし、色々な作動が不安になる車だった。でも窓はついていた。難しい思考を停止している私は「窓があるってすごい」という一つだけを思いながらやっとこさ家に帰宅した。

 

ここから私はだんだんおかしくなっていった。

そこからは、保険会社や警察色んなところとのやりとりを毎日した。
職場の上司や、周りの人間には「車上荒らしにあった」と伝えた。
皆、目を丸くして驚き根掘り葉掘り聞いてくれて、最終的に「可哀想に」という同情の眼差しを向けるムーヴをしてくる。
数日経つと、日々の警察とのやりとりに疲れたのもあったのか、車上荒らしに遭ったヤツというカテゴリにいれられるのが、段々面白くなってくるという変なテンションになっていた。

 

そのうち、研修で初めて会った人間に自己紹介と同時に「この前車上荒らしにあいました、ピリきゅうと申します。」車上荒らしの自己申告をするまでに至ってしまった。
当然メチャクチャ驚かれた。中には「なぜ今それを?」という顔をしていた人もいた。
当然の反応だ。今は短時間で自己紹介をする時間だ。キャッチコピーのように己の不幸をさらけ出す時間ではない。
ただもう疲れていて、私には「車上荒らしを受けた」と申告して周りをビビらせるという楽しみしか今残されてなかったのである。

 

あと、言えば言うほど「車上荒らし」というワードの強さが面白くて仕方がなかったというのもある。
今、大喜利の回答を振られたらなんでも「車上荒らし」と答える自信があった。絶対に「車上荒らし」と答えるパネラーがここにいる。もう、なにがなんでも「車上荒らし」って言いたい。
私は完全に変になっていた。

 


そんな時だった。

警察からまた電話がかかってきた。
「監視カメラを調べた結果、割れる瞬間に人影らしきものは写っていなかったと分かりました」
はえっ!と声を出した。ということは・・・と言う前に、警察が答える。

車上荒らしじゃなかったってことですね」

(嘘・・・・・・だろ・・・・・・・・・?)
私は職場のロッカールームで崩れ落ちそうになった。あんなに車上荒らしというワードに魅せられ、あんなに色んな人間に豪語していた結果、私の窓ガラスは車上荒らしではない割れ方をしていたのだった。
恥ずかしい。とりあえず、あの研修で会った人たちには二度と会いたくない。

「ピリきゅうさんの車の近くで、芝刈りをしていた老人の方がいまして、それの飛び石が原因かと思われます。」

(飛び石・・・!?飛び石割れ?芝刈りジジイの飛び石荒らし?)
必死で車上荒らしに変わるこの現象に名前を付けようとしたがしっくりこない。全ての現象には名前が付けられないのだ。仕方ないことである。

また、事件性がないということが分かったため、あとは芝刈りの団体と直接連絡をして解決して欲しいと伝えられ、警察はこの件から手を引くことになった。
私の手には芝刈りのボランティア団体の連絡先が残る。どうして、ボランティアのおじいちゃんと戦わねばならないのだ。戦意はどうやっても起こらない。

 


「もしもし、お話は○○署から伺いました。代表の○○です。」
団体に電話をかけたら、芝刈り団体の代表のおじいさんが出た。おじいさんではあるがシャキシャキと話している。
その後、何日間かこの代表のおじいさんとやりとりをした。団体で現場検証をしに行き、可能性などを考えたうえでまた連絡しますと言われた。

 

そして、最後の連絡はやってきた。

「すいません、当事者の者もですね、最善の注意を払った上で芝刈をしていましたので、今回はわたくしどもとしても認める証拠もないということでして・・・」

向こうは歯切れ悪く、「やっていない」という意思を伝えてきた。
私はもう完全に疲れていた。もうなんでもいいからこのやりとりを終えたいという一心だった。

「わかりました!では、私の車の窓がひとりでに割れたということで!イヨッ!天変地異!じゃあなクソジジイ!」

そう勢いよく電話を切れたら気持ち良かったであろう。私も歯切れ悪く負けを認め、もうこの件で電話はかけないと伝えた。

 

 

窓ガラス代は中古で安いのを用意してもらい、大体3万円くらいだった。保険は使わなかったので全部自費である。

ということでこのエピソードは3万円で手に入れたエピソードである。
車上荒らし」というスーパー激烈オモロワードは手に入らなかったが、「芝刈りジジイの飛び石割れ」という歯切れの悪い事実っぽいものは手に入った。

 


最初の一文に戻るが、一連の出来事を通して、理不尽な出来事をいかに乗り越えていくかが人生かもしれないと私は思った。
この先も私は色んな理不尽に出くわすだろう。


実は、この窓ガラスが割れた日、難病と言われる「ALS」という病気の支援イベントに行っていた。ALSとは、段々自分の身体が動かなくなり、最終的には呼吸困難に陥り死に至る病気である。
ALSも理不尽そのものだ。突然意味の分からない難病にかかっていずれ寝たきりになる運命を背負わなくてはいけない。
実際に、私の少し近しい人もALSを発症している。

 

「どうして私がこんな目に」
と言う言葉を、出来事の大小関わらず人生で何度も口にすることだろう。


そんな理不尽に出会った時、どう受け止められるかで人生のトータルでの面白さは変わってくるんじゃないかと思う。

現実と自分との間、ちょうど窓ガラス一枚分くらいのポジティブを挟んでみたい。

 

しばらくして、また研修があり、あの時自己紹介をした人に出くわした。
「ピリきゅうさんのことめっちゃ覚えてます!車上荒らし・・・大丈夫でした!?」

この前より時間があるので、3万円分のエピソード、ゆっくり話すことにするか。
私はまた少し、余裕のある人間になれた気がする。