今日は、宴会コンパニオンのことについて話そうかと思う。
宴会コンパニオンとは、
旅館などに来るお客様に対して、お酒を注いだり会話をしたりして、宴席を盛り上げるお手伝いをするスタッフのこと。
制服は、バスのガイドさんのスカートを短くしたみたいな服を着てる。(事務所による)
私は昔そんな宴会コンパニオンで働いていたことがあった。なんといってもお金が欲しいから。時給が良いのはやはり最大の利点である。大変なことも多く辞めたいと思うこともたくさんあったが、なんだかんだで学びが多く振り返ってみると、やって良かったなと思ったりもする。
今日はそのことを話そうと思う。「今日は」って言ったけど、言いたいことが多すぎるので、また話すかもしれない。
ちなみに日記のタイトルは席で死ぬほどデュエットさせられる「愛が生まれた日」という曲から取っています。
愛なんか生まれるわけねぇだろタコ。
というわけで、今回言いたいことはコチラ。
「おじいちゃん、何言ってんのか全く分からない問題」
まあこれは、きっとこの職業じゃなくても言えることなんだろうけど、「会話」というコミュニケーションが職業柄重要になってくるので、話が通じないというのは大変な事態なのだ。
この仕事をしていた当時私の中で、決めていた会話の流れとして
「今日はどこから来たんですか?」
という質問から始まって交通の話、この地方の話、自分の地元の話、という掴み方があったのだが、まずその最初の質問が聞き取れない。
私「今日はどこから来たんですか?」
客「ほにゃほにゃにゃ」
私「へぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
どこだ。
推測しようにも一文字も聞き取れていないので「へぇ〜」としか言いようがない。このままではまずいので何とかして、予想して会話をつなげる。
私「じゃあ〜ここまでバスできたんですかね?」
じいさん客「はぁ〜???」
あれ?
今おじいさん「はぁ〜?」って言った?選択肢ミスった?
飛行機?飛行機が良かった?ねぇジジイ飛行機が良かったの?
意思の疎通が全く取れないまま会話がストップしてしまうので、まずいと思い、隣のお客さんに助け舟を求めてみる。
私「あれ?皆さんの住んでる所からだったらバスじゃないですかね〜?どうやって来たんです?」
隣のジジイ「ほにゃ〜ほにゃほにゃ」
お前もしゃべれねぇのかよ。
おいどうした全員入れ歯外れてんのか。
それどうやってお互いコミュニケーション取ってるんだよ。
そう思ってたけど、その入れ歯外れコンビは仲良く普通に話してるっぽい。
なんで分かるの?
やっぱり長年一緒にいるとなんとなく分かっちゃうの?
それとも本当は聞き取れてなくてお互い会話のボールをぶつけ合ってるだけ?
あ、後者だわ。絶対後者。
どう考えても2人会話成り立ってないもん。
そしてしばらくすると、最初は一文字も聞き取れなかったほにゃほにゃ語がなんとか、単語単語までは聞き取れるようになってきた。
そこまでいったら大体大丈夫。
ジジイ「ほんにゃ〜ほにょがにてのぉ〜ロシアがなんにゃほん〜」
私「うんうん・・・あぁ〜ロシアがね・・・うん」
と、聞き取れた一つの単語をもう一回繰り返して相槌を打てば大体聞いてる感じが出る。
繰り返し方は、相手の話し方によって変える。
なんだか真面目そうな話だったらものすごい神妙な面持ちで噛み締めるように「ロシア・・・か・・・」と言えばいいし、
笑い話っぽかったら「ふふっ!ロシア!確かにw」とか軽く笑っといたらOKである。
ロシアがどうしたとかは全く分かってない。
分かんなくてもいいから、とりあえず面白そうにしてたらいい。最悪、会話の最後に「勉強になりました」って付けとけば、もうなんとでもなる。
これは宴席で行われる「適当」という名の最大の処世術である。
この「適当」の処世術が役に立たないのが、訛りがキツい地方のお客さんである。
言ってしまえば東北地方のお客さんだ。
個人的には、今まで何回も訪れているくらい東北のご飯や人の温かさに私は魅了されているのだが、東北でもさらに訛りのキツい地方の方は本当に終始何を言っているか分からない。
しかも今まではおじいさん限定だったのが、集落によっては若い人でも何言っているのか全くわからない。
「だんだかだん」しか聞こえない。「だんだかだん」しか。
お客さんが誰かに「だんだかだん?」って聞けば
「だんだかだん」って返してるし、
それを聞いて「だんだかだんww」って笑ってる。
だんだかだん博物館で展示を見ているみたいな感じ。あ〜こういうだんだかだんもあるんだ〜!って楽しくなっちゃうわけ。
もうそうなると私の必殺技の単語繰り返しが使えない訳である。
「なるほど」とか「うんうん」とか言いながらニコニコするしかなくなる。
宴会コンパニオンの仕事は会話が重要とか最初言ったけどもうニコニコ相槌マシーンでしかなくなる。
そうなると、出てくるのが旅館の女将ね。
「もうちょっと会話ちゃんとしなさい!盛り上げなきゃ」とか言ってくんの。
なんだよ!じゃあアンタやってみろよ!
旅館に勤めてウン十年のアンタなら、こんな場面なんてヘッチャラなんだろ!?「だんだかだん?」って相槌打つ手本見せてくれよ!!
ほんでなんなんだよその髪型!!
頭にウンコ乗せてるじゃん!!!!
盛りすぎだよ!!!何センチ上に伸びてるんだよ。
しかも全く崩れる気配がないの。
何時間かけてセットしてるんだよ。
言ってしまえば湯婆婆そのものじゃねえかよ。
「地方の温泉旅館に湯婆婆はいた!」って取材されていいくらいには化け物レベルで湯婆婆と競ってるよ。
ほんで、大体二時間の宴席があってその後は延長が取れたら、二次会のラウンジに移動する仕組みになっている。
湯婆婆が見送る中、コンパニオンはオジサンたちを連れてエレベーターに乗ってラウンジに行くわけだ。
ラウンジについてお客さんのお酒を頼もうとカウンターを見る。
湯婆婆がいる。
え?瞬間移動した?
しかも着物も着替えてゴッツイうんこ頭も少しほどいて柳みたいになってるし。いつそんな時間あった?
さっきまで貼り付いた固い笑顔で見送ってくれてたじゃん。物理的に可能なの?そんなこと。
呆気に取られてたら、「大丈夫?あんまり飲み過ぎたらだめよ。頑張ってね。はい、これアンタたち用の!」
って焼酎のウーロン茶割に見せかけた、ウーロン茶を水で割った奴を湯婆婆は出してくれた。
え?なに?急に優しくなってない?
湯婆婆のくせにほんのりあたたかさを感じてしまって悔しい。ゴッチゴチに固められてる髪をほぐしたら、頭までほぐされたの?
物理的にも、人格的にもどう考えても別人にしか思えない。双子でもいるのか。
双子・・・?
あ
もしかして
もしかしてあなたが・・・
はい。
今回言いたかったことはこっちです。
「地方の温泉旅館に湯婆婆と銭婆は存在した。」
以上。